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 2022年に現役復帰を発表してからも、順風満帆というわけではなかった。復帰を決断した織田は目標を2023年の全日本選手権出場に定め、順調に成績を残して予選にあたる2023年の近畿選手権で準優勝。西日本選手権出場を決め、ここで上位6人に入れば全日本に進める。そして西日本選手権では見事に優勝し、出場権を得たかにみえた。

 しかし昨年の全日本に織田は出場していない。日本アンチ・ドーピング機構が義務づけている大会6カ月前までの届け出と、競技外検査が履行できていなかったのだ。目標としていた全日本選手権出場は1年お預けになった。

©GettyImages

 それでも気持ちを奮い立たせて1年後の全日本を再び目指し、近畿選手権で3位、西日本選手権では連覇を決め、11年ぶりの全日本への出場を今度こそ現実のものにした。

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 引退期間中もアイスショーなどで滑る機会があったとはいえ、競技生活の真っ只中にいる現役選手との練習量の差は歴然だ。11年という長い空白を経て全日本4位に返り咲き、4回転ジャンプまで決められたのはなぜだったのだろうか。

「前の現役のときから、こういう気持ちで練習できていたらよかったな」

 織田は全日本へ向けた練習の中で、身体的に「もう限界」だったというが、1度目の現役の時とは違う感覚があったという。

「練習をしている中で苦しい部分もありましたけれど、新しい発見もあって、すごく楽しかったです」

 1度目の現役時代は、どうしても成績を残すことを強く意識してしまい、コーチからのアドバイスに対しても受け身なところもあったという織田。

2005年の織田信成も「現役選手」だった ©時事通信社

 しかし今や3男1女の父となった37歳の織田は、自分がなぜ滑るのか、どんな練習が必要なのか、なんのためにやるのかという気持ちをクリアに持つことができるようになっていた。

「前の現役のときから、こういう気持ちで練習できていたらよかったなと思うくらいです」

 そう言って織田は笑った。