「一平おじさん」は、年齢を重ねたいまだからこそ楽しめる役
――子どもたちとの撮影については?
香取 もちろん台本を読んで事前に分かってはいたんだけど、いざ「一平“おじさん”」と呼ばれると、「お、俺、おじさんなの!?」と、結構なカルチャーショックでしたね。もうそう呼ばれても全く不思議じゃない年齢なんですけど、最初はちょっと抵抗もあって。
でも、思えば僕には十代のころ、「カッコいいおじさんになりたい」という漠然とした憧れがあったんですよ。だから、いま「おじさん」と呼ばれる役が回ってきたことが率直に嬉しくて。撮影の合間も、子どもたちが「ねえ、一平おじさん。お菓子食べる?」とか言ってくると、何だか気持ち良さを感じちゃって。彼らから毎日「おじさん」と呼ばれることで、おじさんという感覚がだんだん馴染んできて、徐々に「一平おじさん」という役が形作られていくような気分で、そこも初めての楽しさですね。
あとはもうとにかく子どもたちがびっくりするくらい元気! 「そんなにパワフルだと夜まで持たないよ?」と言っても、ちゃんと最後まで元気いっぱいだし。もっとも、常に子どもたちと一緒にいるのは、彼らのパパ役の志尊淳くん。現場では、みんなを横目で見ながら「パパは大変。おじさんは楽だなあ」なんて思いつつ、自分の台本を読んでいます(笑)。
――志尊さんの印象は?
香取 志尊くんは人としてのコミュニケーションの距離感も程良く、一緒にいて、とても居心地がいい。ちょっとぶつかり合うようなシーンもあるんですが、初共演とは思えないくらいすんなりやらせてもらっていますね。
僕は事前に台本を読み込まないで現場に入るタイプなので、その分、撮影中は自分の台詞を読みつつ、常に戦闘態勢で次のシーンに備えているので、あまりグイグイ来られると困っちゃうんですよ(笑)。志尊くんはそういう心配がないのもありがたい上にカッコいい。身長は僕のほうが高いけど、スラッとしてて、すごくイケメン。しかも心が真っ直ぐ。みなさんに自信を持って薦められる男です(笑)。
志尊くんというパパがいて、一平おじさんは本来子どもが苦手という設定のぶん、父親や子どもに対して客観的な視点で、「ああ、こういう人って、こういう感じなのか」と役のことが見えてくる。そこも案外、僕にとっては初めての感覚かもしれませんね。
――つまり、年齢を重ねたいまだからこそ楽しめる役でもある?
香取 そうですね。もちろん、僕はおじさん路線でいく気はないけどね。いつまでもアイドルの“慎吾ちゃん”ですから!(笑)。
――今回の主役、座長としてはどのような心持ちで臨まれていますか?
香取 座長感は、いつもあまり意識しないんです。僕は自分がどうしたいとか、現場でほぼ何も言わないし。それは僕のズルさでもあるんですが……。
撮影 杉山拓也/文藝春秋
ヘアメイク 石崎達也
スタイリスト 黒澤彰乃
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