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なぜ辻ちゃんはママタレとして成功したのか?

 そもそもママタレントとは非常に矛盾と欺瞞をはらんだ肩書きです。「仕事」というのは常になんらかの契約と社会的責任を負うものですが、ママタレントにおいては「家族に何かあったら、仕事なんか投げ出して駆けつけます。だって私にとっては家族が一番なので……」とうっとり『たまひよ』などで語らなければいけない。つまり仕事を投げ出すアピールが、仕事への訴求ポイントになるという、ホヤが自分の脳みそを食べながら成長するみたいな摩訶不思議な論理で成り立っているジャンルなのです。

 辻ちゃんのママタレとしての成功は、その欺瞞をいかに上手にうやむやにするかにありました。それを可能にしたのが「ブログ」や「動画」という「テクノロジー」です。

チャンネル登録者数171万人を超えるYouTube「辻ちゃんネル」。辻の出身地でもある板橋区に構えた自宅で撮影した動画を中心に投稿している

 辻ちゃんはテレビのスタジオでもなく、コンサート会場でもなく、自分の家をステージにしました。カメラを置き、料理を作る。子どもたちとの他愛もない会話を撮影する。ダイニングで日々の子育ての悩みや苦労を吐露する。その様子をYouTubeにアップすれば、たくさんの視聴者が共感し、コメントを寄せる。この世に2億稼ぐ専業主婦など存在しないと思いますが、動画というテクノロジーは辻ちゃんを「専業主婦」として見せてくれるのです。動画を最初に発明した人もまさか辻ちゃんがこの技術を最も巧みに使うとは思ってもみなかったでしょうね。

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YouTube「希空ちゃんネル」より

数々の炎上を乗り越えて……

 もちろんテクノロジーだけではありません。自分はみんなと同じ専業主婦であるとカメラの前で演じ切る辻ちゃんの胆力も重要。顔を出さないとはいえ、家族を動画に登場させることにはたくさんの批判があったことでしょう。そこは数々の炎上を乗り越えてきた辻ちゃん、自身のメインチャンネル、夫とのカップルチャンネル、長男と次男のみが出演するチャンネル、そして今回デビューした長女の『希空ちゃんネル』と、まさに令和の家内制手工業。「嘘」の世界を「ホント」に見せるため、リアリティとはサンプル数の多さが醸し出すことを辻ちゃんは本能で悟っているのかもしれません。