食道がんで闘病していることを明かした俳優の山﨑努(88)。その内実について、次女・直子氏とともに語る。

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ステージⅣの食道がんが見つかった

 山﨑努(以下、) 昨年2月にステージⅣの食道がんが見つかった。同じような状況にある方の参考になればと、娘に手伝ってもらって対談の形で体験を報告します。

 入院、闘病を続けて、一時期は胃ろうでしか食事が摂れなかった。

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 今はすっかりよくなって、何でも食べられるようになりました。一番難しいお米、ご飯は征服したし、麺類にも挑戦して、ラーメン、そばを食べてみた。もう何でも食べられる。

 山崎直子(努氏次女。以下、直子) 本当によかった。

 最初は胆嚢の痛みの診察で病院に行ったんだよね。ただ、その前から食べ物を飲み込みづらいとは言っていたから、もしかしてがんかもしれない、という自覚はあったらしい。

 でも、私たちには、がんだとしても自分はこのまま受け入れようと思うって。とにかく検査を受けて欲しかったけれど一向に病院に行ってくれず……。

 そのうちに、多分、体が早く治せって悲鳴をあげて胆嚢炎の激痛になったのでは、と私は思った。

山﨑努氏と直子氏 Ⓒ文藝春秋

 努 胆嚢炎は本当に痛くて七転八倒、病院に行かざるを得なくなった。

 そしたら担当してくれた先生が、すぐにベッドを押さえてくださり、「食べ物が飲み込みにくい症状が気になるから、一度入院して精密検査を受けるように」と言ってくれた。

 僕は面倒くさいから最初、入院しない、検査も受けないって抵抗したんだけど、結局CTを撮ってみて、がんだとわかった。今思うと、あの先生には感謝です。

 直子 そのあと、最初に一対一で話したがんの専門医の先生の存在も大きかった。

 努 抗がん剤治療専門の先生が、最初に2人きりでお会いしたいと言ってね。

 30代後半ぐらいの無口な人で、会っても全然喋らないんだ。しばらく2人で黙って窓から空を見てた。しかたがない、こちらから世間話ふうに色んなことを喋ったの。

 その中で僕が「もう充分生きましたから」みたいなことを言ったんだ。そうしたら、初めて「その言葉で安心しました。思い切って治療に踏み切れます」って決断してくれた。

 僕は87歳(当時)という齢で、彼はそんな年寄りを診たことがなかったんだね。抗がん剤をどのぐらい使ったらいいか、患者の精神状態はどうなるのか、そういうことがとても不安だったらしい。