石破内閣で外務大臣に就任した岩屋毅氏。外相としての現在の活動や、今後の日本の外交面における課題について語った。(取材・構成 峰田理津子・ジャーナリスト)

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1泊7日、地球1周分の初外遊

 外相に就任するやいなや、まさに激動の日々の連続でした。国際情勢は激震が続いている。次から次へと起こる新たな事態への対応に追われながら、その激流の中で日本丸の進路を懸命に模索する毎日が続いています。

「数の力で押し切る国会運営はもはやできない」と語る岩屋氏 Ⓒ文藝春秋

 初外遊は11月14日に南米ペルーで行われたAPEC(アジア太平洋経済協力)閣僚会議です。現地では、米国のブリンケン国務長官や韓国の趙兌烈(チョテヨル)外交部長官をはじめ、参加各国の外相と立て続けに2国間会談をおこない、11月24日にはG7外相会合のためにイタリアを訪問。これまで約40カ国の外相との電話会談をこなし、国会審議を終えたあとは外務省において連日、訪日外交使節との会談をおこなっています。

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 ペルーからは急遽、ウクライナへと飛びました。外相就任以来、できるだけ早く現地の状況を自分の目で確認したいと考えていたからです。ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序が崩壊し始める端緒となった大事件であり、この事態にいかに対応するかによって今後の世界秩序は大きく変わっていくことになる。我が国にとっても極めて重要な外交テーマなのです。

 ウクライナへはポーランドから国境まで約3時間を車で移動し、そこから夜行列車に乗って首都キーウに到着しました。滞在はわずか1日でとんぼ返りしましたので、初外遊を終えてみるとちょうど地球1周分に当たる4万1000キロを移動する1泊7日の強行軍となりました。

「外務省が組むスケジュールは国際人道法違反だよ(笑)」と冗談めかす一幕も Ⓒ文藝春秋

 ホテルで寝たのはリマの1泊だけで、あとは機中泊と列車泊。さすがに疲れましたが、それだけの成果はあったと考えています。

 ウクライナではまず、虐殺のあったブチャを訪問し、犠牲者の御霊に献花をおこなった。続いて、ロシア軍戦車の進撃を防ぐために自ら爆破したというイルピニの橋を視察しました。「力による一方的な現状変更は世界のどこであっても許されてはならない」という思いをあらためて強くしたところです。