ゼレンスキー氏の「勝利計画」
続いてウクライナ要人との会談に臨みましたが、カウンターパートであるシビハ外相だけでなく、シュミハリ首相に加え、ゼレンスキー大統領とも会談することができました。プロトコール(国際儀礼)からすれば、本来、外相訪問に大統領が応対する必要はないのでしょうが、大統領は約45分も時間を取ってくれました。
大統領府に到着すると、建物内の至るところに土嚢が積まれていました。姿を現したゼレンスキー氏は、スーツではなく、黒いシャツにカーゴパンツ姿。一見しただけで、氏がまさに戦時下のリーダーであるということを実感させられました。大統領は、ロシアの侵略を終わらせるための「勝利計画」を説明してくれ、「石破総理によろしくお伝えください。一刻も早くお目にかかりたい」との伝言をあずかりました。
我々の訪問直後にはウクライナとロシアとの戦いは1000日を超えました。出国した直後にも、ミサイル攻撃で新たな犠牲者が出るなど、戦況は依然として緊迫した状況が続いています。1日も早く公正で持続的な平和が実現し、国民の皆さんに平穏な日々が戻ってくるように、国際社会が引き続き支援を継続していかなければならないと思います。
アジア版NATOの真意
ウクライナ戦線には北朝鮮兵士が派遣されており、その余波がアジアにも及ぶことが懸念されます。中東ではガザでの戦闘が周辺に飛び火しつつあり、その中で人道状況は極めて悪化しています。アサド政権の突然の崩壊によってシリア情勢も予断を許しません。お隣の韓国の政情は不安定化し、先進各国の政権にも揺らぎが生じており、同盟国・米国は政権移行の真っ只中にあります。
こうした状況で、まず日本が力を尽くすべきは、アジアの安定です。これまで推進してきた「自由で開かれたインド太平洋」への取り組みをさらに充実強化していくことによって、地域の平和と安定を確保していかなければなりません。
石破総理は総裁選の期間中から、「アジア版NATO」の創設を訴えてきました。総理就任後、「自説を曲げた」と言われていますが、私は決してそうではないと思っています。石破総理はウクライナがロシアの侵略を阻止できなかった要因を考え続ける中で、ウクライナがNATOに加盟していなかったことが大きく影響したことに留意されたのでしょう。そこで、将来的にはNATOのように、アジアにも安全保障の“大きな屋根”を架けるべきではないかと考えた。私はそう思います。
※本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「石破総理との相性は心配ない」)。全文では、岩屋氏が外務大臣に就任した経緯、自民党総裁選における石破氏との共闘、国会における石破氏の印象、アメリカや中国との理想的な関係性、石橋湛山からの影響などについて語られています。
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