交流戦はいよいよ大詰めです。1か月に満たない短期間のドラマ。今年もさまざまなエピソードが残りました。バファローズは「あと一歩!」という結果になりましたが、好調さの中でファンの皆さんも応援の甲斐がありましたよね。

 裏方仕事をしていた当時、私が心躍らせていたのはマスコットとの交流でした。普段のリーグ戦では対戦しない球団のマスコットとめぐり会えるのも、楽しみのひとつだったんです。

 プロ野球12球団には、実に個性豊かなマスコットが揃っています。ドラゴンズのドアラさんは、ゆるっとした脱力キャラでありながら、人間くさく、さりげなく人を観察して身近なファンに寄り添っています。スワローズのつば九郎さんは、スケッチブックに毒の効いた時事ネタコメントを殴り書き、多くの人を笑いの渦に巻き込んでいます。コミカルな動きで人々を愉快な気持ちにさせてくれるカープのスラィリー。甲子園球場の緑の芝生を自在に駆け抜け、満員のファンを前に弾むようなバク転を披露するトラッキー。ジャビットもDB.スターマンもそれぞれに特徴ある、愛らしいキャラクターです。

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バファローズの愛らしいマスコット、ブルとベル

 多彩なキャラクターがひしめく球団マスコット界にあって、正統派のカテゴリーに入るのが、我がバファローズの愛すべき兄妹・バファローブルとバファローベルでしょう。しかし、その登場は実にエキセントリックな形でした。

 球団がロゴやマスコットを改めた2011年。それまでのネッピーやリプシーと交代する形でお披露目されたふたりは、何と、「ロボット」の扱いだったのです。京セラドームに棲むナゾの科学者「大阪八カセ」なるキャラクターが生み出した設定だったため、仮名が「バッファロボ1号・2号」というもの。公募によって決まったのが今の名前です。

自分たちの動きをチェックする研究熱心なブルとベル ©Dreamin'

球界最高峰のロボットキャラ

 今でこそ、彼らがロボットだったというエピソードは、「知る人ぞ知る」レベルにまで落ち着きましたが、登場1年目の秋のことです。試合前の始球式でボールが手首に当たって骨折したブル君は、戦列を離れることになったのですが、当時の新聞には「京セラドーム大阪の地下資材庫に設けられた、オリックス・バファローズ研究開発室に運び込まれ、修理中」と記されました。

 そして、今年。また始球式でアクシデントが起きました。今度は角です。黄金に輝く左角に投球が直撃し、角を失ったブル君。しかし、周りの空気が凍り付くなか、表情ひとつ変えずにグラウンドから退場していったのです! 何とシュールなことでしょう。

アクシデントで角を失ったブル ©スポーツニッポン

 骨を折り、角を折る、“オリ”ックス・バファローズのマスコット。ただ、その姿を見て、イーグルスのMr.カラスコから聞いた“アキレス腱を切った時の話”をふと思い出しました。「ブチッと切れたら神経まで切れるから、あの瞬間、激痛は感じなかったんですよ」 ……確かに。ブル君は、「全治1時間くらい」と関係者が話していたように、即座に角を回復させてファンとふれ合う超人(いや、超牛)的な姿をみせていましたね。実にいじらしいじゃないですか!

 一方、妹のベルちゃんは、登場するやいなや“萌え系”キャラに人気が集まり、女性の球団マスコットキャラクターとしては、日本で初めてとなる写真集「ベルがいっぱい」が発売されたほか、公式DVD「ベルといっしょ。」や、絵本「ベルとおにいちゃん」、果てはアクションフィギュアまで世に送り出され、認知度が一気に高まりました。

 ロボットなのに可愛らしく、しなやかな女子の感性を持ち合わせたベルちゃん。試合中、球場の中をお散歩しがてらアナブースを覗いてくれていたのですが、その時の様子がこちら。

アナブースを覗くベル ©Dreamin'

 とっさのことで、ピントがいまいち甘いのですが、彼女の愛らしさがあふれる一枚。ファンの心をつかむのが、改めてわかりますよね。