現在発売中の月刊文藝春秋2月号および電子版で、俳優・山﨑努さんがステージⅣの食道がんで闘病生活を送っていたことを、次女・山崎直子さん(俳優)との対談形式で報告し、大きな話題になっている。

 その山﨑さんの最新刊文庫『「俳優」の肩ごしに』は、日本経済新聞の連載「私の履歴書」をまとめた自身初の自伝で、執筆当時がんは発見されていなかった。しかしこの作品の中に唯一、闘病後のリハビリ中に書かれた文章が収録されている。それが「文庫版あとがき」である。

山﨑努氏と直子氏が語り合う ©文藝春秋

 壮絶な闘病の後、快復に向かう山﨑さんの心情が表現されたこの文章を紹介する。(全3回の第3回/最初から読む

文庫版あとがき

 丹精を込めた庭が完成する。美しい。完璧である。そこに雑草が生えてくる。雑草もきれいだ。
 僕の理想の演技はこれ。この場合、雑草はあちらこちらにちらほら、というイメージ。
 今年の夏は猛烈な暑さで、わが家の庭は雑草で覆われた。ちらほらどころではない。その迫力に目を見張った。音を立てるように育って行く。
 うん、そんな演技がしてみたい。
 この本に尽力下さった池澤夏樹、山下澄人、山下智久、(中略)各氏に感謝します。

 


二〇二四年十月十日午前九時 努

山﨑努氏と娘の直子氏 ©文藝春秋
「俳優」の肩ごしに (文春文庫)

「俳優」の肩ごしに (文春文庫)

山﨑 努

文藝春秋

2025年1月4日 発売