また本作は、第37回東京国際映画祭にて、東京グランプリ/最優秀男優賞/最優秀監督賞の三冠を達成!さらに、11月に行われた台北金馬映画祭のWindows On Asia 部門」に選出、12月には上海国際映画祭の「Japanese Week」に招待され、先日発表された、第18回アジア・フィルム・アワードでは、作品賞/監督賞/主演男優賞ほか6部門へのノミネートの快挙!国内外で絶賛の渦を巻き起こしている。
筒井作品を長年愛読してきた吉田監督
今回吉田大八監督によって映画化され、現代老人文学の最高峰と言われる『敵』の原作・筒井康隆の著作には、「パプリカ」、「時をかける少女」、「七瀬ふたたび」などの大人気SFから、「わたしのグランパ」などの人間ドラマ、「文学部唯野教授」のようなポストモダンを笑い飛ばす知的野心作まで、幅広いジャンルが存在し、それぞれが映像化され話題になってきた。中でも「時をかける少女」は、実写・アニメと9度に渡って映像化され、今なお幅広い世代から支持を集めている。
そんな筒井康隆作品の中における『敵』という作品について、筒井作品を長年愛読してきた吉田監督は「驚異的な解像度で生活のディテールがひとつひとつ綴られていく、普通に心地よい前半———主人公・渡辺儀助の静かな日常———が次第に侵食され、後半にかけて儀助の記憶がカオスのまま家中へ放たれていく、ダイナミックな展開がやっぱり大好きでした。そういう、丁寧に積み上げた世界を一気にぶっ壊す“筒井的カタルシス”は、昔からの愛読者だった僕の基本的志向に多分なっています。」とその魅力を語る。
さらに「『敵』にも共通する筒井さんの匂いはこれまでの作品へも自然に滲み出していたことは自覚している」と自身への筒井康隆作品の影響についても明言する。