国立西洋美術館(東京・上野公園)で展覧会「モネ 睡蓮のとき」が開催中です。

 印象派を代表する画家のひとりであるクロード・モネ。世界最大級のモネ・コレクションを誇るパリのマルモッタン・モネ美術館と国内の美術館が所蔵する珠玉のコレクションから、〈睡蓮〉を中心とした全64点が展示されています。

 この展覧会に、作家の一色さゆりさんが訪れました。

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 ギャラリー・美術館勤務のある一色さんに、大混雑必至の展覧会を鑑賞するコツや、〈睡蓮〉の思い出についてお聞きしました。(前後篇の後篇。)

小説家の一色さゆりさん。 ©文藝春秋 「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年 報道内覧会時撮影

「世界屈指の〈睡蓮〉の聖地」だと思う美術館は?

―― 一色さんは国内外問わず、様々な美術館でモネの〈睡蓮〉をご覧になられていると思います。モネの〈睡蓮〉に関して何か思い出やエピソードがございましたら、ぜひお聞かせください。

 スイスにあるバイエラー財団美術館が所蔵する《睡蓮》の三幅対ですね。もともとモネの《睡蓮》をきっかけにしてデザインされた美術館で、何メートルにもわたる大作の〈睡蓮〉が常設されています。

 常設展示室と庭がガラス越しに面していて、すぐそばに睡蓮の池が広がっている。つまり、人がつくりし至高の〈睡蓮〉と、自然が生みだした美しい睡蓮とが、呼応するような構成なんです。

 また、たっぷりの自然光のなかで立派な〈睡蓮〉を鑑賞するという貴重な体験ができる場所でもあって、世界屈指の〈睡蓮〉の聖地だと思います。本当に素晴らしい美術館です。

©文藝春秋 「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年 報道内覧会時撮影

 私はご縁があって、二度ほど仕事で訪れるチャンスがありました。一度目は画廊に勤務していたとき、コレクターのお客様をアテンドして。二度目は国立新美術館の学芸課で働いていたとき、展覧会準備のための調査として。

 季節は夏と冬、両方を体験しましたが、どちらも言葉にしがたいほどの魅力がありました。美術品をここまで自然と調和させて展示することができるのか、と。まるで自然そのものがアートのようで、入れ子構造になっていたんです。