今季のイチ推しは、バカリズム脚本、市川実日子が主演の『ホットスポット』、これで決まりかな。

 富士山麓の小さな町に、宇宙人がひっそり暮している。この設定がいい。それも樹海とか風穴でなく、町民に混じってだから。

バカリズム ©時事通信社

 市川実日子が演じるシングルマザーの清美は地元のビジネスホテルに勤務、てきぱきフロント業務をこなす。同僚役が坂井真紀と夏帆だからテンポ良し。男の同僚も角田晃広ですよ。

ADVERTISEMENT

 冴えない風貌の高橋さん(角田晃広)が実は宇宙人だった! ネットで大きく報じられてるから私も書いちゃいますね。

 自転車通勤の清美が夜道でトラックにハネられたがカスリ傷もない。衝撃はあったのに。呆然としてると、きまり悪そうに高橋が現れ「あの……これ、誰にも言わないでね」。衝突寸前の自転車ごと清美を持ち上げて助けたのだ。

 翌日、礼を言うと、高橋はまたも他言無用と念を押す。なぜですか。「あの……俺、宇宙人なのね」

 恐怖のエイリアン。逆に凜々しい異星人。ともに陳腐だ。格好悪い平凡な男が町でひっそり暮す。このほうがリアルで新しい。

 昔、そう一九六〇年くらいまで、日本空飛ぶ円盤研究会とかあって、三島由紀夫を筆頭に石原慎太郎や新田次郎も会員だった。

 夜空に向かって、ベントラベントラと唱えると円盤が来るってね。なんか古くさくて格好悪いんでブームも衰退。「SFマガジン」の創刊は六〇年二月号。

 SFって言葉は新鮮でお洒落だった。皮肉にも、SFの浸透が円盤とタコ型宇宙人を駆逐した。六四年にゼナ・ヘンダースンという女性作家のピープル・シリーズが紹介された。女性教師が赴任した山奥の小学校の住民はオドオドして秘密を抱える。子どもも超能力を使う。恩田陸さんの常野物語シリーズも、これにインスパイアされた。

 口止めされたのに、清美は平岩紙と鈴木杏が演じる幼なじみの二人に喋っちゃう。二人にせがまれ、高橋が宇宙人パワーを見せるけど、十円玉をグニャリと曲げる。脱力するよね。

 スプーン曲げもさ、スプーンが曲がって工場の効率アップ、にはならないよね。

 同性同士の会話とかシスターフッド的な共感力溢れる市川実日子だから、紙と杏との会話の面白さは最高!

 冒頭シーンで野間口徹が幼い子と露天風呂に浸かってるの。すると幼児が鼻をクスンって。ホテルのテレビを清掃員(野呂佳代)が盗んだのを高橋が突きとめたとき、過重な負荷が鼻にかかってグズグズしてたのと酷似していたんだ。

 高橋は、父が宇宙人で母は地元の人間。そう言ってたが、清美の別れた夫も? 富士山麓の町は、宇宙人のホットスポットかも。こういう考察は愉快だ。

INFORMATIONアイコン

『ホットスポット』
日本テレビ 日 22:30~
https://www.ntv.co.jp/hotspot/