朝ドラ『おむすび』が震災を描いた理由について、脚本を担当する根本ノンジは、制作局がNHK大阪で、オンエア中の2025年に阪神・淡路大震災から30年の節目を迎えるため「その出来事としっかり向き合うべきではないか」と思ったと答えている(「NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説おむすび Part1』より)
そして同時に「昨今の朝ドラのオリジナル現代劇は良くも悪くも、いろいろな意味で注目される。そのため正直オリジナルを描くことを躊躇した」とも語っている。
現代を舞台にしたオリジナル作品は批判されることが多い
濁した言い方だが、近年の朝ドラは過去に成功した偉人をモデルにした主人公の半生を描いた物語が人気だ。対して現代(昭和末~現在)を舞台にしたオリジナル作品は批判されることが多く、2013年の『あまちゃん』と2017年の『ひよっこ』以外は厳しい批判に晒されている。
根本が「躊躇した」と言っているのはそのためで、今や現代劇は朝ドラにとって鬼門だと言って間違いない。特に評価が厳しいのが『おむすび』のような平成を描いた作品だ。
バブル崩壊以降、失われた30年と言われた平成は文化的にはそれなりに豊かで、今振り返ると平和だったが、経済的には低成長の停滞した時代だった。
そんな時代を生きるヒロインを描こうとすると、どうしても物語は内省的で暗いものになってしまい、派手な活躍を描くことが難しくなる。
実在の偉人をモデルにしている朝ドラなら、あらかじめ成功譚となることがわかっているため、視聴者は安心して最後まで見届けることができる。
だが、「主人公の成功」が保障されないオリジナルキャラクターの場合、先が見えない展開になるため、視聴者は不安に晒される。
そこで身内に足を引っ張られて貧乏になるといった鬱展開が続いたり、登場人物の行動に違和感を覚える不可解な描写が続くと視聴者のストレスが溜まり、その捌け口として激しい批判が呟かれ、SNSが炎上する。