文春オンライン

年収800万以上の中堅サラリーマンはなぜ騙されたのか

スマートデイズ経営破綻──サブリース事業にみる「甘えの構造」

2018/06/05
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大手会社の管理職も1億6000万の負債を抱えることに

 こうした詐欺商法はいつの世にも存在する。今回の事件は私の知人の知人、も被害にあったそうだ。彼はそこそこ大手の会社の管理職で年収は800万円。1億円ほどの物件を全額ローンで購入し、利回り8%で30年の保証だったそうだが、運用開始後わずか3か月で賃料はストップ。あわてた彼は実際の物件を初めて見学に行き、棟内に住んでいた入居者はわずか1名であることにその場で気が付いたのだという。不動産投資に興味があったという彼は、これまでも投資用のワンルームマンションを1室所有していたのだが、かぼちゃの馬車は同じくワンルームマンション投資を行っている知人から薦められたのだそうだ。

経営破綻したスマートデイズの説明会に集まった物件所有者たち ©共同通信社

 彼はこれとは別に住宅ローンも抱えているために、現在の負債総額は1億6000万円。「人生オワタ」である。

サブリース事業に見る「甘えの構造」

 さてこの事件はもう、世間ではかなり有名になっているようだが、事の本質は事業者側も投資家側も「サブリース」という事業に対する「甘え」があったということだ。

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 まず、事業者側が投資用のシェアハウスを実際の相場よりも相当の高値で売却した問題は置くとして、この事業が破綻した時点で、このシェアハウスのオーナーは投資家であり、このオーナーの床を借り上げているのはスマートデイズである。この場合、あくまでもスマートデイズは借家人であり、借家人の立場は借地借家法によって極めて借家人に有利なように守られているのである。つまり「賃料は保証した」ものの、実際の賃借相場よりも不相応に高く借りてしまったので、保証賃料を引き下げてほしい、というのは借家人としての正当な引き下げ事由になるのである。また最終的に賃料が支払えなくなってしまったのであれば、契約内容にもよるが、借家人は一定のペナルティーを支払えば賃借期間内での解約だって可能ではあるのだ。「いつでも都合が悪くなったらやめられる」という事業に対する決定的な「甘さ」が事業者側にあったことは否めない。