さらにA氏の上には港浩一社長がいて、港氏が出世した背景にもフジテレビの接待文化があったのではないかという指摘や、港氏の上には日枝久氏が36年間もトップに君臨というメディアとは思えない不健全な姿が見えてくる。

産経にはかつて合同結婚式の広告が載ったことも…

 3年前に文春は『日テレ高視聴率でもフジが統一教会を報じない理由』(8月18・25日号)として、「現在もフジサンケイグループの代表を務める日枝久氏は、安倍晋三元首相と会食やゴルフを重ねるなど親しい間柄。また、産経にはかつて合同結婚式の広告が載ったこともありました」というフジ局員の証言を載せていた。以前からメディアとしてのありようを問われていたのだ。やはりフジテレビ問題(メディアの問題)は存在するのだ。

フジサンケイグループ代表の日枝久氏 ©文藝春秋

 最後に書いておくと、今回の文春の訂正の騒動を見て私は11年前のメディアの出来事を思い出した。朝日新聞の慰安婦問題での訂正・記事取り消しである。

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朝日新聞の30年以上経ってからの記事訂正

 朝日は韓国で女性を慰安婦にするため強制連行したと証言してきた吉田清治氏の記事を取り消した。「証言」は虚偽だったからである。吉田証言に対する疑念は他のメディアで指摘されてきたが、朝日は初めて掲載してから30年以上経った2014年になって突然記事を取り消した。あまりにも遅かった。

 しかしある意味攻めの姿勢も感じた。一つのミスを訂正しなければ他の記事まで否定する人々がずっといるだろうからだ。このミスは認めるが「慰安婦問題」は存在する、という宣言にも見えたのである。ところが朝日はその後のバッシングに明らかに腰が引け、今もネットの批判を気にしているように見える(朝日にいた記者らも証言している)。

 つまり文春はどうなのか。一つのミスを認めたことで逆にそれ以外の記事は正しいと宣言したことにもなる。しかしバッシングによって朝日新聞のようにファイティングポーズをおろしてしまうことはないか? 自分が問題だと思ったことを追い続けることができるのか。そこが今後の最大の見どころだと私は注目している。