念のために書いておくと、私たち読者は簡単に「裏付け」とか「取材」と言うが、記者やジャーナリストから「取材してもミスや間違いがつきもの」と以前から聞いていた言葉も思い出した。いくら取材を尽くしても、締め切り等に追われ、どうしてもミスや誤報を免れることができない。

女性セブンの初報に乗っかりすぎた面はなかったか?

 だから発覚したらすみやかに訂正、修正し、場合によっては経緯を説明して謝罪するのがメディアの大原則であると。それがメディアの信頼性を担保することになると。

 そういえば文春の第一弾は正月の合併号だった。締め切りのタイミングもあったのだろうか? 女性セブンの初報に乗っかりすぎた面はなかったか? その点もくわしく知りたいところだ。

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フジテレビ ©︎時事通信社

 違和感といえばこれも書いておこう。文春が記事を訂正したことで「中居・フジテレビ問題」報道は意味がないという論調も見かける。文春は廃刊すべきという声もある。では、そもそもX子さんはA氏の誘いをなぜ断れなかったのか?

 X子さんは、

「向こうは番組を作る側、キャスティングする側だから私たちに拒否権はないじゃないですか。(タレントへの接待に)行くしかないみたいな感じで。それが許される社会になっちゃったらいけないよな、って思います」

「私と同じような被害に遭っている子がいます」

 と文春の第一報から述べている。

フジテレビの絶望的な権力勾配

 事件前にX子さんは、3回ほどA氏に誘われ、中居氏らと酒席を共にしており、ある日飲み会の場所へ向かうタクシーの中でX子さんは「こういう会に参加して損はないからさ。仕事に確実につながるからさ」とA氏に言われたことを証言している(1月30日号)。

 絶対的な権力を持つ上司から言われたら……。被害者が仕事上断りづらい構図が背景にあったからでは? という重大な論点がある。だからこそ「(事件は)Aさんがセッティングしている会の“延長”だったことは間違いありません」とX子さんは認識しているのだ。絶望的な権力勾配についても問うているのである。