雅子さんが「これは夫が担当していた土地だ……」
職員も内心そう思っているのではないか? 最後は申し入れ内容を本省に伝えるよう訴えた上で、一言。
「これ(申入書)僕らが出ていったらすぐにほかす(捨てる)んとちゃうの?」
「そんなことはございませんので」
真剣な話にもちょこっと笑いを交えるところが、いかにも大阪人だ。
申し入れが終わると、賛同する人たちが庁舎前で「上告はせず文書を出して」と呼びかけながらビラを配った。この冬一番の寒波に見舞われ、官庁街を吹き抜ける風で寒さがひとしお身にしみる。
その様子を原告の赤木雅子さんが少し離れた場所から見守っていた。ちょうど職員が退庁する時間帯だ。ビラを差し出しても受け取らずに走り去る人を見ると心が痛む。庁舎前の掲示板をふと見ると、国有地の測量をするための入札公告が貼り出されている。対象となるのは千里万博公園。その地名で雅子さんは思い出した。
「これは夫が担当していた土地だ……」
元気なら名前が書かれていたかもしれない。そう思うと切ないが一方で、真相を明らかにするため上告断念を求める活動は心強い。訴えが終わると雅子さんは参加者に「寒い中ありがとうございました」とお礼を伝えた。
奇しくも、2月4日は石破首相の誕生日。68歳になった首相は木村市議らの申し入れを、そして雅子さんから届く切なる想いをどう受け止めるのか。
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2月5日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および2月6日(木)発売の「週刊文春」では、森友事件を取材し続けるフリー記者・相澤冬樹氏の特別寄稿『森友裁判逆転勝訴までの2522日 赤木雅子さんが語った「決断してよ、石破さん」』を掲載。国との裁判で初めて勝った赤木雅子さんの日々や胸中、そして判決当日の様子などを4ページにわたって詳しく綴っている。
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