取締役の過半数「協議打ち切り」に反対せず

 日産のリストラ計画の実効性とスピードに課題があると判断したホンダは、今年1月半ば頃から、共同持ち株会社による経営統合プランは止めにして、日産を子会社化して役員人事も含め、ホンダが直接コントロールする新しい統合プランを日産側に打診していた。

 日産の経営に関しては現在、多額の資金を融資しているメインバンクであるみずほ銀行の影響力が強いと見られる。関係者によると、ホンダの三部氏はみずほ銀行に対しても、日産の子会社化について理解を求め、了承を得たという。

 子会社化を迫る動きに、プライドの高い日産は猛反発した。2月3日に開催された執行役員以上が集まる会議で、「自力再建」を目指すことを決め、翌4日にはホンダに協議を打ち切る方向であることを告げた。さらに5日には取締役会が開催され、12人の取締役の意向を確認すると、過半数が協議打ち切りに反対しなかったという。

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 だが、この取締役会では、社外取締役で監査委員会委員長の永井素夫氏(元みずほ信託銀行代表取締役副社長)、同じく社外取締役で取締役会議長の木村康氏(ENEOSホールディングス名誉顧問)らが、協議打ち切りに反対したといわれている。2月13日まで、この内容を適時開示をしなかったのは、取締役会で正式な決議を取ったものではなかったからだ。

ゴーン氏時代の「負の遺産」が課題 ©文藝春秋

5年間で抜本的改革をできなかった内田体制

 だが、賛否両論ある中で、なぜ日産は協議打ち切りを急いだのだろうか。日産・ホンダ両社内には「問題は内田氏のリーダーシップの欠如。ホンダによる子会社化を嫌い、自力再建に舵を切ろうとしている一部の役員を内田社長が制御できなかった」と見る向きは多い。

 日産は自力再建に向けて舵を切り始めたが、それは不可能に近いと筆者は感じている。内田氏が社長に就任したのは2019年12月。すでに当時からブランド力低下による値引き販売での収益性悪化、「ゴーン経営」時代の負の遺産である過剰設備の解消が大きな課題であることはわかっていたはずだが、内田氏以下の執行部は効果的な対応策をほとんど打てていない。

日産に残された4つの再建シナリオを解説する記事全文、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(井上久男「ホンダとの協議を蹴った“プライド高き”日産に残された4つのシナリオ」)。

 

現在発売中の「文藝春秋」2025年3月号と「文藝春秋PLUS」には、両者の交渉過程を詳細に取材したレポート、「日産鈍感力社長にいら立つホンダ暴れ馬社長」(井上久男)が掲載されています。

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