20年でたどり着いた結論

 従って、マーケットに携わる者は常に謙虚な姿勢で向き合うよりほかない。慢心せず、丁寧に勉強、研究、対話を続ければ、予測や行動の成功の確率は高くなっていく。知見、経験が100%に近づけてくれて、かなり予想通りになっていく。私は努力を怠らなかった自負はあるが、たまたま、これまで運にも恵まれてきた。しかし、決して自らの予想が100%当たると思ってはならない。どこに落とし穴があるか誰にもわからない以上、断定する見解は絶対に信用しない。これが20年、相場を見続けてたどり着いた、つまらない結論だ。

為替介入の指揮官として注目を浴びた Ⓒ共同通信社

 マーケットには森羅万象、虚偽情報やポジショントークも含めてだが、あらゆる情報が入ってくる。その何が主導するか、それは自分の投機ポジションを有利にするようなテーマの競争にも影響され、不合理なファッション(流行)のようなものである。為替は特にそうだ。金利差相場、リスク(許容度)相場、成長格差相場、様々なテーマがトレンドを作り、損切りや利益確定で反転や加速を伴いながら、次のテーマに移るいい加減さを見てきた。

※本記事の全文は「文藝春秋」2025年3月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(神田眞人「為替介入 水面下の国際工作」)。記事全文(約1万4000字)では、下記の内容をお読みいただけます。
・為替介入に至った危機感 
・日本は謙虚に「スモール」の自覚も
・イエレン長官らと率直に議論
・投機による為替変動の不当さ
・無秩序な動きには介入できる
・チャート分析は“腕立て伏せ”

■連載「ミスター円、世界を駈ける」
第1回 ウクライナ、ガザ……そのとき国際金融の現場で何が起きたか
第2回 戦時下のキーウ行夜行列車
第3回 今回はこちら

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