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彼女が誰にも言えなかった理由
塾に報告したり周囲の大人に相談してもよさそうなものだが、岸田さんはできなかったという。当時の自分の心情をこう振り返る。
「本当に男性として見ていたわけではないのでキスされた時は腹も立ったし、ムカつきました。塾に言えば処分してもらえるとも思いましたが、だからと言って誰かに言いたくはなかった。年上の男性からのこういう行為を受け入れてしまった自分が嫌だったし、他人に知られたら自分の価値を下げてしまうような気がしたんです。
正直に言えば、性的な接触さえなければどこかで先生との時間を楽しいと思っていた自分もいました。構ってもらえるし、居心地もよかった。高校生の自分にとって心のよりどころだったし、手放したくないという気持ちもあって。いわゆるグルーミングだったんだと思います」
講師からのアプローチは受験直前まで続いたが、塾ではなるべく顔を合わせないように距離を置いていたという。
「私が東京の大学に合格、上京してからはLINEを通じて連絡は来ていました。『地元に帰ってきたら遊びにおいでね』とか『誕生日プレゼント用意してあるから』『離婚したよ』とか。さすがに会いませんでしたし、そのうち連絡も来なくなりました。今もどこかの塾で講師をやっているのかもしれないですね」
