でも、令和は共働き世代が多数の社会になっています。産前バリバリ働いていた女性も多いと思います。頑張って働かないと教育費用は捻出できないし、でも産後思うように働けない。「子供に全て捧げる」という生き方も、今の女性の生き方とはあまりにギャップがあります。
お母さん像は昭和・平成のまま求められるのに、令和の世はそうはできていない。そんな「間にいる苦しさ」があるように感じます。
「品行方正・清廉潔白な母」が求められている
――実際に、真船さんは世間や周囲からどんな「お母さん」像を期待されていると感じますか?
真船 「お母さんは子供のために生きる」という生き方像や、子供の見本となるように品行方正・清廉潔白でいるというイメージが漠然と、でもしっかりともたれているような気がします!
「お母さんなのに、子供を置いて好きなことをするなんて……」
「子供よりも親の欲求を優先してつれまわすなんて……」
という声は、一部かもしれませんがネットで日常的に散見される意見ではあります。
また、ママたちの世界においてもファンキーすぎる見た目や突飛すぎる言動のお母さんとは少し距離を置きたくなる気持ちがあります。自分がママ友の間でハブられないように、必死で「フリー素材写真の母」の見た目を目指していた時期もありました。
――フリー素材……(笑)。当たり障りのない見た目ということですね。母としてのプレッシャーを特に感じる瞬間は?
真船 ネットでの声はもちろん、普段の会話でも感じる時があります。
「お母さんになったら、もうしばらく飲みにはいけないんだよ」とか「まっとうに生きなきゃいけないんだよ」とか(笑)。これが年貢の納め時、みたいに「子供を産んだら生まれ変わる」のが前提での発言をごく日常的に言われてきましたし、自分でもそうなんだろうな、と思っていました。
そして街中を歩いているときも一人の時よりも圧倒的に視線を感じ、声をかけられることも増えました。「靴下履かせなきゃだめじゃないの」とか言われると「ああ~お母さんとして至らないとジャッジされてしまった……!」と一々落ち込んだりしていましたね。
――漫画の中で、ご自身の中にも「ちゃんとした母にならなければ」という思いがあったと書かれていますよね。どのような母を目指していたのでしょうか。
真船 「聖母像」のような、神聖で厳格な母をイメージしていました。
妊娠出産って、奇跡の連続でめちゃくちゃ特別な出来事ではありますよね。そんなミラクルを経て生まれてきた子供は神聖で尊い存在で……。自分もそんな存在を立派に育て上げる資格のある存在にならなきゃいけない。産む前はかなりフリーダムに生きてきた人生だったので、産後は超絶改心しないとお母さんにはなれないぞ…!と思っていました。
聖母にはなれなくても、私の母親は専業主婦で子育てに命を懸けてきた人なので、そんな母には近づけるように頑張ろう、とも思っていました。
育児の話題が「着火率異常」なワケ
――SNSでの育児の話題が「着火率異常」という作中のお話は「確かに!」と共感することばかりで面白かったです。真船さんはSNSの「ママ垢」界隈をどう思いますか?
真船 育児をしている人にとってSNSって本当に切り離せない関係で……。私はコロナ出産組でまったくほかの妊婦さんと知り合えなかったので、SNSをやっている時だけは、境遇の近い友達と本音で話せている気がして。本当に大事な一つのコミュニティなんですよね。隙間時間のちょうどいい暇つぶしや、大事な情報源でもあります。

