描くのに勇気が必要だった理由
――本作を描いたことについて「勇気を出してよかった」とXのポストに書かれていました。今回の内容について描くのは、覚悟が必要だったのでしょうか。
真船 いつもハッピーワハハなギャグマンガを書いているので、読者の人がショックを受けないかが、まず心配で。誰とも話してこなかった内容なだけに、ほかのお母さんとは自分は違うのではないか、誰にも共感してもらえないのではという恐怖もあり、とても覚悟が必要でした。特に母親としての自我が崩壊していく10話・11話は書きながら泣くこともありました。
私は実母も近くにいて、比較的恵まれた環境なのに、「こんなことでくじけるなんて、甘えている」と言われないかも不安でした。書きながら葛藤しているうちに、「正しいお母さんじゃなくて、なりたいお母さんになるという本を書いているのに、私自身まだ『正しいお母さん』にこだわっている!」と気づくこともありました。
でも、本を発表してみて届いたのは「勇気を出してこの本を書いてくれてありがとう」のレビューばかりで。
育児を楽しんで、お母さんをきちんとやってる人しかダメなんだ、と思うばかりに誰にも言えなかった「お母さんが苦しい」という感情を、顔も名前も出している私が吐露したことによって、初めて「そう思ってもいいんだ」と気づく人もたくさんいたようです。
――真船さんのように不安を抱えていた人にちゃんと届いたんですね。最後に、この作品をどんな人に届けたいですか?
真船 この本を通して、大げさかもしれないけど、令和の子育てにまつわる常識を変えたいと思っています。
それには子育て中のお母さんはもちろん、子供に興味がない、子供が嫌いな人にもぜひ読んでほしくて。もしかしたら、「子連れ嫌い」に一番読んでほしいかもしれないです。知ることで変わる世界もあると思うのです。
だから誰が読んでも面白い漫画に仕上げて、その中に知ってほしい現状や実態を入れ込んで一冊の本にしました。お母さんを額縁の中にしまうのはやめて、生き生きと走り回りながら子育ても人生も楽しんでいける世の中になりますように!
ここまでめちゃくちゃまじめなインタビューになってしまいましたが、1Pに1回は笑える楽しい本にしましたので、ぜひ読んでみてください。

