テレビ東京の社員として働きながら、漫画家としても活躍する真船佳奈さん。コロナ禍の中で生まれた息子が成長して外出できるようになってから、町を歩くときに向けられる他者の視線が気になって仕方がなくなったという。

『正しいお母さんってなんですか!? 「ちゃんとしなきゃ」が止まらない! 今日も子育て迷走中』より

「あるべき母」「ちゃんとした育児」を目指して迷走する真船さんは、次第に追い詰められていった――。

 コミック『正しいお母さんってなんですか!? 「ちゃんとしなきゃ」が止まらない! 今日も子育て迷走中』(幻冬舎)は、そんな真船さんの悩める日々を綴った育児奮闘記だ。発売後すぐに大きな共感と話題を集め、同じ苦難に直面した「お母さん」たちから多くの反響が届いた。

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 果たして令和の世に子育てをする「お母さん」が直面するプレッシャーとは何なのか? ここでは、真船さんに詳しく話を伺った。(全5回の1回目/続きを読む

 

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令和の子育ては「情報が入ってきすぎる」

――『正しいお母さんってなんですか!?』は育児の苦労や悩みについて描かれた作品ですが、一方で笑えるところも多くて、楽しく拝読しました。早速お聞きしたいのですが、令和に子育てをする大変さとは、ズバリなんでしょうか?

真船佳奈(以下、真船) もちろん、昭和・平成のお母さんたちも大変な思いをして子育てをしてきたという前提はありつつ、令和は令和の大変さを感じています。

 ズバリ……と言いながら3つ挙げると、「情報が入ってきすぎる大変さ」「子供が希少種であるという大変さ」「お母さん像がずっと変わっていないことの大変さ」です。

――情報が「入ってきすぎる」?

真船 以前のお母さんたちは、情報や機器のなさに苦しんだところもあるでしょう。私たちはその点はかなり恵まれています。スマホで子供の体調について調べ、お出かけもマップが導いてくれて、SNSをひらけば子育て仲間と情報交換ができます。

 一方で、「子供に〇〇しないとだめ!」「〇〇をする親の子供はこうなる」などという過激なキャッチフレーズの育児情報に脅かされたり、SNSでは「子連れ様」「ベビーカーを畳まない迷惑な親」「子供の泣き声がうるさい」など、本来は見えなかった人の意見まで可視化され、そのせいで息苦しくなったり、自分を責めてしまうこともあります。

SNSの意見を見て、外出するにもプレッシャーが……

 よく「それならネットを見なきゃいい」と言われますが、ネットをやめたらまた出産直後の孤独が戻るのでは、という恐怖もあります。育児の隙間時間には、SNSくらいしかできることもありません。便利と苦しいのはざまを常に味わっている感覚があります。

――加えて、少子化で子供が少なくなっていることの影響も感じると。

真船 子供がそこら辺に溢れていた頃には日常の風景に溶け込んで許されてきたであろうことも、子供が“希少種”となった令和の世ではいやでも注目を集めてしまう。電車に乗るだけでも、見渡す限り子供は息子だけ。泣いたらどうしよう、迷惑と思われたらどうしよう、と気が休まらないまま外出をしていました。

 子供が減った分、「少ない子供に全てのリソースを割いて、親が立派に育て上げるべき」というムーブメントはますます高まっている気がします。早期教育にお受験、習い事……。「やらせないと、他の子と差がついてしまうの?」という不安も常にあります。