だからこそ、ついそのワールドに入り込んで面と向かっては言えないことを強い口調で言ってしまったり、逆に気が緩んで火種を作ってしまって炎上したり……とトラブルも絶えません。叩いているママ垢も、普段は一生懸命育児をしているお母さんだったりするんですよね。

 そして私自身も子供を産んでから、「赤子は世界の宝だからみんなで守ろう!」という気持ちになってしまって、ついほかの人の育児を斬ってしまう気持ちも理解できてしまいます。しないように気を付けてますが……。

作中で説明される、他人の“育児斬り”をしてしまう心境

――では「ママ垢」界隈とはまた別の、SNSなどで見かける「子連れをよく思わない人たち」をどう思いますか? 子供を連れて外出する人が不安になるような意見も見えてしまうことがありますよね。

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真船 SNSでそういう言動をしている人たちの意見を見てみると、いろんな背景の人がいて。一部上げると、子育ての実態がわからずに批判している人や、子供という存在自体にアレルギーがある人もいます。一概には言えないですが、少なくとも「育児の実態がよくわかっていないで叩いている」人たちに関しては、性教育や保健体育で、もう少し子育てのリアルについて伝えたり、私のように漫画を通して育児を知ってもらえたら、考え方も変わるんじゃないかな、と思っています。

「子供をよく思わない人たち」の意見がSNSに溢れている

「お母さんにはお母さんの人生がある」

――安心して母をやれる人を増やすために世の中にも変わってほしいですよね。これから先、社会や人々にこう変わってほしいと思うことはありますか?

真船 今の私は、思いっきり仕事をし、好きな漫画も描き、そして育児も楽しんでいる生活を送っているのですが……。そんな姿を見ていた後輩に、「真船さんを見ていたら子供を産むのが怖くなくなりました」と言われました。

 彼女の話を聞いていて思ったのですが、子供を産んで育てるって、確かに未知の世界で、妊娠出産自体が怖い、という側面はありつつ、自分がこれまで頑張って作り上げてきた世界が子育てによって失われてしまうのが怖い、と思う人が増えているんじゃないかと。

 お母さんだから自分のことはあきらめなきゃいけない、という考え方がもう令和の世の中に全然あっていないのかなって、アップデートしていかなきゃいけないのかなって思います。

お母さんとしての「あるべき姿」とは?

 子供を産んで泣く泣く仕事をやめたり、好きなことをあきらめてまで、子供を産む……。SNSでは子育て世代が「迷惑」「非常識」とフルボッコになっているところを見かける。子育ては楽しいことももちろんたくさんあるけれど、「かわいい」だけでは乗り切れない世界であることも事実で、実際私は自分自身を見失って、子供がかわいいと思えなくなるほど追い詰められた時期もありました。

――作品にも描かれていましたが、とても辛そうでした。

真船 だからこれからは、「お母さんにはお母さんの人生が、子供には子供の人生がある」っていう考え方に変わっていければ、子供を産むのが怖くないって思える人がたくさん出てくるのではないでしょうか。

 もちろん私のように産前と変わらぬ生活をする上では、ベビーシッターさん代や病児保育、家事代行など、めちゃくちゃお金がかかってきます。そうしたものも補助はありますが、まだまだ自己負担が多い世の中です。便利家電もかなりのお値段します。

 精神的な面はもちろん、お金や人的リソースの面でも、子育てをする家族を支える制度が充実していったらいいなあと思います。少ない子供を、みんなで育てる社会になったらいいのかな、と。