旧日本軍があのゴジラに勝つためにはどう戦えばいいのか…? 映画『ゴジラ-1.0』をもとに、小泉悠氏、高橋杉雄氏、太田啓之氏の軍事に精通する3人が激論。新刊『ゴジラvs.自衛隊 アニメの「戦争論」』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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「高雄」型重巡4隻で巡洋艦戦隊を組んでゴジラに勝つ
小泉悠(以下、小泉) 「高雄」の20.3センチ主砲は一瞬効くんだけれども、すぐ修復してるんじゃないですか。口の中に爆弾突っ込んで、顔半分吹っ飛ぶんだけれども、あれもわりとすぐ治っちゃう気もするんですけど。
高橋杉雄(以下、高橋) あっちのほうが効いたんです(笑)。
小泉 でも、水の中に沈んでいきつつボコボコと再生してるシーンが描かれたので、あの世界のゴジラも、あれで終わりではないわけですよ。
高橋 個人的にはあの時「高雄」の水中弾の命中場面とか見たかった。
太田啓之(以下、太田) 意味がわからない人も多いかと思うので説明しますと、日本海軍の徹甲弾は海の中に潜った後、魚雷のように進んで敵の舷側装甲の下をぶち破るという機能がついております。
小泉 まぁ別にゴジラの水線下の装甲が薄いわけでもないわけで。水線下で当たってなんなんだって。
高橋 ただのマニアだ(笑)。
──50番(500キロ爆弾)と20.3センチ(砲弾)、どっちが爆発力強いんですかね?
高橋 弾着速度次第じゃないですかね。当たった時の速度はたぶん主砲のほうが速いかな。運動エネルギーや貫徹力は「高雄」の主砲のほうが強いと思うね。
──「高雄」の砲撃があれだけ当たって平気なのに、震電の爆弾くらいで倒せるのかなと。「高雄」も口の中にバンバンぶち込めば……。
小泉 そこは当時の射撃統制装置の能力が……みたいな、言いわけになるんですかね(笑)。
太田 あそこもツッコむと……砲塔は上から乗せてるだけだから、艦が傾いてると撃てない。
高橋 そうそう。宇宙戦艦「ヤマト」みたいに傾斜しながら撃てない。たぶん装填ができないんですよね。
小泉 たとえば、「高雄」型重巡4隻で一個巡洋艦戦隊組んでれば、1隻であれだけやれたんだから! 4隻でバカスカぶち込み続けてれば……。
高橋 魚雷も撃ちながら。
──重巡は「高雄」と同じ港に「妙高」が残ってるんで、2隻はいけますね。
小泉 そうそう。再生速度を上回る形で、どんどんどんどん破壊し続ける。最盛期の連合艦隊対ゴジラ(笑)。
太田 戦争中にゴジラが出てくる『ゴジラ-2.0』ってのは、ありうるかも。
小泉 それは観てみたいっちゃ観てみたい。
太田 オタクしか観ないかもしれんけど(笑)。
高橋 まぁでも戦争初期だと放射能がないんで、ゴジラにならない。
太田 そうか、そうすると、『ゴジラvsキングギドラ』みたいにタイムスリップの設定を(笑)。
小泉 山本五十六率いる連合艦隊がゴジラをアウトレンジしまくるとか。
太田 でもアウトレンジとか効かないんですよ。ゴジラが恐るべきスピードで接近してくるんで。
小泉 だったらやっぱり「アイオワ」級と殴り合ってほしいですね。
