AKBを停滞から救ったのは珠理奈だった
その翌月に名古屋・栄のSKE48劇場オープン9周年を祝い、前夜祭として行なわれたメンバーによるトークショーでは、MCを務めた安田大サーカスのクロちゃん(熱烈なアイドルファンとしても知られる)が締めくくりに、ここしばらくメディアへの露出が減っていたSKEへエールを送った。これに思わず感涙したのが珠理奈と須田亜香里である。二人ともソロでの活動も多く、現在のSKEを代表する存在だけに、グループに対する責任感はどのメンバーよりも強い。とくに珠理奈は、松井玲奈の卒業以来、SKEの牽引役を一身に担ってきただけに、なおさら自分の不甲斐なさを感じていたのではないか。
じつは、珠理奈はこれ以前、AKBでもグループを停滞から救う役回りを担ったことがある。それはSKEが結成された2008年のこと。AKBはこの年、06年のメジャーデビュー楽曲をリリースしてきたレコード会社との契約が終わり、キングレコードに移籍して再びCDを出すまで、配信限定となった9作目を挟んで8ヵ月も待たねばならなかった。この“空白期間”を経て同年10月にリリースされたAKBの10thシングル「大声ダイヤモンド」で、前田敦子とWセンターに抜擢されたのがSKEの珠理奈だった。彼女はこのときまだ11歳の小学6年生ながら、同シングルのジャケット写真も単独で飾っている。
起死回生をかけたシングルで、まだ無名の新人をセンターに据えたのは運営側としても賭けであっただろう。しかし突如として地方から現れた小学生にセンターを奪われ、AKBのメンバーたちは奮起した。これを機に、それまでアキバのアイドルというイメージが強かったAKBは国民的アイドルへと駆け上がっていったのである。
あれから10年。初期にグループの中心となったメンバーの多くが去り、AKBに対する世間の注目度はかつてほどではなくなっている。10回目となる選抜総選挙は、ぜひ、そんな停滞ムードを打ち破るきっかけとなってほしい。それにはやはり珠理奈の力が必要なのではないか。
珠理奈がトップに立ってほしい、2つの理由
選抜総選挙はもともと、シングル曲を歌うメンバーを運営側ではなくファンが自分たちで選びたいという要望を受けて2009年から始まった。運営側の選考ではシングルでセンターになったことのない指原莉乃が、センター常連の大島優子や渡辺麻友を押さえて総選挙で通算4度も1位になり、その座を射止めたのは、まさにこの趣旨にかなっている。
こうした先例からすれば、AKBのシングルではまだセンター経験のない荻野由佳が1位になってもおかしくない。個人的にも、荻野のほか、前出の須田亜香里(昨年6位)や、AKB48に在籍しながらSTU48のキャプテンを昨年の結成時から務める岡田奈々(昨年9位)が1位になるところはいつか見てみたい。
だが、今年にかぎってはやはり松井珠理奈がトップに立ってほしい。それは、10周年を迎えるSKEの幸先のよい再スタートと、10年前と同様にAKBに漂う停滞ムードの打破を期待してのことだが、もう一つ、彼女にはここまでSKE48のために背負ってきたものをいったん下ろしてもらい、個人としてこれから進む道をじっくり考えてほしいと思うからでもある。本人の性格からいっても、総選挙で1位にならないことには、次のステップへ進めないのではないだろうか。
とはいえ、1位になったらなったで、負けず嫌いの珠理奈のこと、今度は前人未到の総選挙4連覇をめざすのではないかという気もしないではないが。
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