様々なジャンルを重層的に含んだ一冊

 本書はニューロマイノリティの当事者研究本でもあるが、わたしのような当事者の身近にいる人間にとっても、当事者の体験を知る貴重な機会を与えてくれるものだ。そして言うまでもないが、世界を周遊する旅行記でもある。多彩なイメージがレイヤーになって立ち上がってくる横道さんの文章と同様、この本自体が、様々なジャンルを一冊の中に重層的に立ち上げており、文学や芸術、そしてポップカルチャーについて書いた評論エッセイでもあり、一人の青年の成長物語としても読める。文章から立ち上がるイメージも豊潤なら、本書がカバーするジャンルもまた幅広く豊かなのだ。この本を読んでしまったら、書店のどこに並べたらいいのかわからなくなる書店員さんは多いはずだ。

  考えてみれば、伝統的な本のジャンル分けそれ自体が、ニューロマジョリティによる分類だったのである。それを軽々と超えてくる書物がマジョリティではないところから出てくるのは、当然のことなのだ。

『発達障害者が旅をすると世界はどう見えるのか』