政治の中心地、東京・霞が関から“マル秘”政界情報をくわしくお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。

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財務省の“切り札”とは

 2025年度予算案を巡り、財務省が総力を挙げたのは日本維新の会の説得である。焦点となった高校授業料の無償化では、私立高への支援拡大を梃子に予算修正の合意にこぎ着けた。奔走したのは主計局の吉野維一郎次長(平成5年、旧大蔵省入省)である。

 馬場伸幸氏が代表だった時は「大阪勢も馬場氏の言うことを一応聞くので、ある程度のまとまりがあった」(内閣官房幹部)ため、維新への根回しは数人の幹部の了解を得れば方向は固まった。ところが、今は状況が違う。維新の前原誠司共同代表に対し、「新参者なのにリーダー然と振る舞うのは納得できない、という反発が党内に渦巻いている」(関西の自民党中堅)からだ。

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2025年度予算案の成立に向けて、野党の説得に財務省が奔走した ©cap10hk/イメージマート

 吉野次長は馬場氏や前国対委員長の遠藤敬氏をはじめとする「堺・泉州グループ」の議員たちに予算修正案を説明し頭を下げて回った。

 他方、当初、予算修正協議の主役になるかと思われたのが「103万円の壁」の打破を掲げた国民民主党である。だが、吉野氏と同期入省の玉木雄一郎代表が頑なに基礎控除の178万円への引き上げに固執したことが官邸や自民党執行部の怒りを買った。2月に入ってからは、新川浩嗣次官(昭和62年、同)も「国民民主を交渉相手にするのは難しい」と見切りをつけ、早い段階で「塩対応」(課長級)に転じたのだ。

国民民主党代表の玉木雄一郎氏は、不倫問題による役職停止中が解けたばかり ©文藝春秋

 国民民主が求めた基礎控除拡大には、当初予算案の大幅な増額修正が欠かせなかった。そこで財務省が切り札として持ち出したのが、内閣の予算提案権である。「国会の予算修正は、内閣の予算提案権を損なわない範囲において可能」とする過去の答弁を根拠に、「いったん提出した予算を国会で大幅に増額するのは現行憲法では認められていない」という理屈を繰り出した。逆に予算を減額したり、金額を変えずに組み替えたりするのはかまわない。

 主計局の小澤研也法規課長(平成8年、同)は開成高校から東大法学部を経て、「国家公務員試験をトップ合格で入省した秀才中の秀才」(省関係者)。財政を巡る法令にも精通する。新川氏は東大経済学部出身だが、法規課で課長補佐を務めているから戸惑いはなかった。

 野党幹部のリストを手に議員会館を回る吉野次長も「過去4回の当初予算修正でも、増額の例はありません」と説き続けた。《記事の続きでは、野党への説明に動いた財務官僚についてさらに語られています》

※本記事の全文(約5400文字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と、「文藝春秋」2025年4月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
★財務省の“切り札”
2025年度予算案を巡り、財務省が総力を挙げたのは日本維新の会の説得である。焦点となった高校授業料の無償化では…
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2月号 野党対策の黒子たち、官邸に漂う閉塞感、総務官邸官僚の実力、次期警察人事の行方
3月号 経産省が込める“実弾”、新次官と首相の距離、財務相を支える女性たち、インサイダーの“余波” 
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