政治の中心地、東京・霞が関から“マル秘”政界情報をくわしくお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。
燃え盛る厚労省の中で……
「こんなはずではなかった……」。厚労省幹部らが一様に頭を抱えるのは、高額療養費の負担上限見直しである。各界からの猛反発に慌てた厚労省は、重い慢性的疾患を抱える患者らが利用する「多数回該当」の引き上げ凍結を打ち出し、なんとか沈静化を図るものの、燃え盛る炎の勢いを抑えるのは容易ではない。
見直しの中心となったのは、省内厚生系で「筆頭局」とも目される保険局である。昨年7月に就任した鹿沼均局長(平成2年、旧厚生省)は同期の間隆一郎年金局長(同)や村山誠官房長(旧労働省)と次官の座を争っている。
厚労省は、社会保障分野を半ば既得権益化する自民党の厚労族議員以外との付き合いは避けがちだが、鹿沼氏は省内でも数少ない「政治銘柄」とされる。
2012年の第二次安倍政権発足直後に当時の菅義偉官房長官秘書官に起用され、5年半を官邸官僚として過ごした後、20年9月の菅政権発足で首相秘書官として“出戻り”した経歴があるためだ。
長官秘書官時の同僚には、のちに「有名次官」となった矢野康治元財務次官(昭和60年、旧大蔵省)、中村格元警察庁長官(61年、警察庁)のほか、林幸宏内閣府審議官(63年、旧経済企画庁)、市川恵一官房副長官補らがいる。個性派の面々の中で、鹿沼氏は「細かい政策はよく分からないんですけど」などと言いつつ、飄々と立ち回り、菅氏の受けも上々だったという。
岸田政権では内閣官房に出向し、「異次元の少子化対策」の策定に関わった。その際に政権が口約束したのが「実質負担なし」での財源確保策だ。実は、併せて決定した工程表には、細かな文字で「高額療養費自己負担額見直し」の文言も書き込まれていたのだ。
ひっそりと潜り込ませた“手形”の回収に、鹿沼氏率いる保険局が動いたのは昨秋のこと。法改正を必要としない制度見直しの肝を意識し、11月から矢継ぎ早に専門家会議を4回開催した後、引き上げ案への了解を取り付けてしまった。《記事の続きでは、高額療養費の負担上限見直しがトントン拍子で進んだ背景を解説しています》
※本記事の全文(約5400文字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と、「文藝春秋」2025年4月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
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