Aくんが書いた作文は、イジメ被害体験は書かれているものの、その体験を前向きに捉えようとしている内容だ。しかし校長は、「個人特定につながる」という理由で内容の修正を求めたという。しかしAくんと保護者は強硬に反発し、代理人弁護士を介してやりとりした結果、Aくんが書いた作文のままで掲載されることになった。

「いじめの加害児童について実名で書いているわけではなく、内容的にも辛い経験をなんとか前向きに捉えようという内容のものです。それなのに内容の変更を要求され、納得できませんでした」(Aくんの母親)

 4年生の時にAくんが受けたいじめについては、現在も調査が続いている。

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 6年生になった年の8月にさいたま市の教育委員会が調査に着手し、10月には「いじめ重大事態」と認定。その後、第三者による調査委員会(第三者委員会)が設置された。

写真はイメージです

「教育委員会の対応自体も調査対象になると思うのですが…」

 その第三者委の方向性を決める要因の1つに、調査委員の人選がある。この人選についてもAくんの母親は希望を出し、一部認められた。

 文科省の、当時の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(2017年3月)では、調査組織は「当該いじめの事案の関係者と直接の人間関係又は特別の利害関係を有しない者(第三者)」によって構成することとされている。ただし、第三者のみで構成するか、教育委員会が主体となったうえで第三者が加わる体制にするかは、学校や設置者の判断に任されている。

「Aが受けたイジメに対する教育委員会の対応自体も調査対象になると思うのですが、第三者委員会の主体が教育委員会自身だったんです。私たちは他県の弁護士の先生やNPO法人を入れてくれるようにリクエストしたのですが、一度は『中立公正ではないからダメ』と言われました。しかし他県でNPO法人が第三者委員会に加わっている例を伝え、今は協力してくれるNPO法人を探し、認められました」