「褒めますおじさん」を始めた理由

褒めますおじさん 以前から路上のパフォーマンスを見るのが好きで、ぼんやりと憧れがあったんです。自分のしたいことを自由に表現できて、見てもらえるのっていいなと。家もなくなったし、どうせならしたいことをやってみようと思って。

――ただ、好きなタイミングで披露できるダンスや歌と違って、“褒める”のは、人からお願いされないとできないことですよね。

褒めますおじさん 自分にできて、人が喜んでくれることは何かを考えた時、パッと思いついたのが“褒める”だっただけなんです。歌や楽器だと、うまくないとお金がもらえない。でも、褒められてイヤな気持ちになる人は少ないでしょ。人がお金を払うのは、いい気持ちになったときだという目論見もありました。

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――褒めるにあたり、練習はしたんですか?

褒めますおじさん 練習、しました。ブックオフで買った『大人のほめ言葉』という本を読み込んで、シミュレーションして。本のなかで印象的だったのは、話を聞くことも相手の自己肯定感を高めるという部分ですね。

褒めますおじさんのバイブルとなった本 ©細田忠/文藝春秋

――2021年の12月30日に始めた理由は?

褒めますおじさん その日、所持金が600円になって、カップラーメンを食べたらカツカツ。寝る場所もなく、ついに限界になったので、その時いた町田の駅前で立つことにしたんです。

――どのぐらいの時間立って、いくら稼げたんですか。

褒めますおじさん 夜の9時ぐらいから朝の3~4時までで、4400円でした。実は最初は立ってなくて、体育座りだったんです。これまでの仕事は鉄工所とか解体屋とか、1人で黙々とやるものが多かったし、恥ずかしくてフードを被って。

 こんなことで本当にお金を稼げるのか不安もありましたが、30分ぐらいして、初めてのお客さんが来てくれたときはほっとしました。でも冬だしお尻が冷たくて、立ってた方がまだまし(笑)。お客さんが来てくれたことも自信になって、立つタイミングでフードも取りました。

――初日の収入は4400円。順調な滑り出しでしたか?

褒めますおじさん 2日目は大晦日だったので、川崎に行きました。川崎大師があるから、初詣に行く人で賑わうかなと。

――戦略的なんですね。

褒めますおじさん 本当に人が多くて、2万円ぐらい稼げました。その時に、「いけるかな」という手応えも感じて。この経験で、地元のお祭りや花火大会など、人が集まるイベントをチェックするようになりましたね。“屋台”を出す感覚です。

――報酬は、あくまでもお客さん次第ですよね。現在の平均収入は?