フジワラ マーケティングの視点で“自分の戦うフィールド”をどう見定めたかは本書をお読みいただくとして、児童書という分野に狙いを定めた私は、作品にコンテクストをもたせるため、「どこかで見たことがあるような」安心感がありながらも新しい魅力を感じられる絵柄を目指しました。

 リスペクトするさまざまな作家の系譜のエッセンスを再解釈して組み合わせることで、自分の作品がどういう系譜に位置づけられるものであるかを示したのです。具体的には、古き良きアメリカの物語性を感じさせる画風で知られるノーマン・ロックウェル、自然な日常描写が卓越している近藤喜文さんなどを踏まえました。私の作品が引き継いでいる「文化的な遺伝子」を意識したことで、作品に奥行きが生まれました。

 結果、どことなくクラシカルな普遍性がありつつも今っぽいセンスで描けるイラストレーターとして認知され、児童書の分野のクライアントたちから「教材に最適」「社の広報にも安心して使える」と言ってもらえるようになったのです。

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「どくしょのじかん」 ©フジワラヨシト

――ブランディングは各企業でさまざまな取り組みがありますが、フリーランスの表現者がその手法を取り入れたのはすごく新鮮です。

フジワラ 系譜としてのストーリー性だけでなく、イラストそのものに物語性をもたせることも意識しました。ノーマン・ロックウェルの絵がそうであるように、登場人物の感情や背景が感じられるストーリー性のあるイラストは、見る人の心に深く残り、何度も見返したくなるものだからです。

 それは単に綺麗とかかわいいにとどまらず、思わず人に語りたくなる表現にするうえでも不可欠な要素だと考えています。

――確かにフジワラさんの描く子どもや動物たちにはストーリー性がありますね。

フジワラ この子は何をしようとしているのかな? 動物さんとはこの後どんなことが起こるのだろう? と想像力を働かせることができるようなイラストは、イマジネーションを刺激された体験が心に残り続けるもの。それが見る人の心に響くストーリー性の力だと思います。

 本書は、好きなことを仕事にしたい、あるいは趣味を収益化したいと思っている人の背中を押したくて書きました。現時点で好きなことをまだ仕事にできていなくても、絵描きの視点でお酒の営業を見たことが私の突破口になったように、「好き」を自分の軸にもちつづけることで思わぬ道も拓かれると思います。

 業種・業態を問わず汎用性が高い戦略スキルを盛り込んだので、活用していただけたら嬉しいです!

コネ、スキル、貯金ナシから「好き」を仕事にするまでにやってきたこと
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刊行記念スペシャルイベント
4月15日19時〜 TSUTAYA BOOKSTORE 梅田MeRISE
フジワラヨシト×あんじゅ先生
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