和見 オーディション会場に行ったら、みんな自分よりも若くてキレイで……。緊張して頭が真っ白になりました。2次を通過して、6月30日が最終オーディションで、ウォーキングの審査だったんです。通過できたのはめちゃくちゃ嬉しかったんですけど、微妙な気持ちでした。目の前に落ちた人がずらっと並んでるんですよ。その場では、おおっぴらに「良かった!」みたいな気持ちにはなれなくて。本番よりよっぽどオーディションの方が緊張しましたね。
──応募者約400人、最終合格者12人の狭き門だったとか。夢のランウェイを歩いている時は、楽しかったですか?
和見 まわりからも「楽しんでね」とは言われたんですけど。とはいえ、しっかり歩かないといけないんで。けみさんからも「モデルは歩く人形。主役は服」と言われていたので、歩くことに集中していました。
「ハゲ=笑っていいもの」日本の価値観を変えたい
──プロの仕事ですね。目標が叶った後は、どんな気持ちになったんですか?
和見 実はランウェイを歩きたいという夢と並行して、僕みたいなハゲのおっさんをモデルとして使ってくれるような世界を作らないとあかんなって思うようになったんです。
──というと?
和見 「NOHAIRS(ノーヘアーズ)」っていうネットのコミュニティがあるんですね。ハゲで日本を明るくしようと活動をされていて。調べてみると、日本ではそういうハゲが集まる活動が古くからあって、東北の方にも「ツル多はげます会」っていう会があったりして。
──本で読んだことがあります。頭に吸盤をつけて綱引きしたりするんですよね。
和見 そうそう!(笑)ただ、そういう過去の活動を調べてみると、日本ではずっとハゲをコミカルに扱ってきたんですよね。
──ハゲを自ら笑いに変えていくスタンスですよね。
和見 そうなんですよ。ハゲがバカにされる文化は、日本人の中でずっと残り続けてきたんです。でも、パリ行くと僕みたいなスキンヘッドや薄毛の人ばっかりなんですよね。成人男性の半分以上は、ハゲと髭(笑)。そういう人が普通にカフェでコーヒー飲んで、かっこつけているんです。
調べてみると、フランスではハゲを笑う文化はなくて、むしろセクシーだと考えるそうなんです。だから、日本にもそういう文化をつくらなあかんちゃうか、と。ランウェイを歩いた後は、その道をどうやって作るかをずっと考えて、 パリやミラノのモデル事務所にアタックしまくってます。
──以前、和見さんはYouTubeで「ハゲのモデルは許せるか」というアンケートを取っていましたね。「許せない」と答えた人に理由を聞くと、ほとんどが「なんとなく」だったのが印象的でした。
和見 嫌悪が根付いてしまっているんですよね。ネットで「ハゲのモデルは許せるか」と聞いたら、20代は「許せる」と答える割合が3割くらいだったんですが、30代は半数以上、40代は8~9割が「許せる」と回答してくれたんです。