「オールドメディアの敗北」の声も…

 石丸は広島県安芸高田市の市長時代、同市の公式YouTubeにアップされた市議会での答弁や記者会見の様子が注目されて全国的な知名度を獲得した。ただ、その人気はあくまでネットに限ったものと見られており、主流メディアの扱いは大きくなかった。ところが選挙戦中盤頃から、YouTubeなどでの急速な存在感の拡大は無視できないものとなり、最終的に「石丸現象」と呼ばれる旋風に至った。

 同年の衆院選で躍進した国民民主党の玉木雄一郎代表も、2024年にネットの力を最大限活用した一人だ。6年前からYouTubeチャンネルを開設していた玉木は、ネットの発信力で「圧倒的」だったと分析される。ソーシャルメディア上で情報収集や発信・投票をおこなう新たな有権者層の出現にともない、ネット人気と現実の投票行動が結びつきはじめた。

 同年11月におこなわれた兵庫県知事選でも、ネットの力が注目を集めた。そもそも同選挙は、異例のプロセスを辿ってきた。

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 2024年3月、兵庫県の元幹部職員が斎藤元彦知事のパワハラ疑惑を告発する文書を発表した。しかし、同職員は懲戒処分となり、議会はパワハラ疑惑を調査する百条委員会の結果を待たないまま、知事への不信任を議決した。当初、パワハラ疑惑などが繰り返し報じられたことから斎藤の再選は難しいという見方が強かったものの、ネットで同氏への擁護や議会への非難が強まり、斎藤は出直し選挙で勝利した。

 この選挙結果について、斎藤知事のパワハラ疑惑やおねだり疑惑などを繰り返し報じていたテレビなどを念頭に「オールドメディアの敗北」と揶揄する声も多く、大手紙も「混乱と停滞を招いたとして斎藤氏に厳しいスタンスだったメディアへの不信感も斎藤氏にプラスに働いた可能性がある」と振り返った。

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