都知事選では小池百合子氏に次ぐ得票数を記録した石丸伸二氏、パワハラ告発を受けたあとの出直し選挙で勝利した兵庫県知事の斎藤元彦氏。選挙に強い2人の共通点とは? ニュース解説メディア『The HEADLINE』編集長、初の著書『カウンターエリート』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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盛り上がるエリート批判
こうした政治的な変化やメディア環境の変化は、より大きな社会的変化を示唆している。それは、カウンターエリートの台頭と呼ばれる現象だ。
結論を先取りするならば、カウンターエリートは単なるアンチエリート(反エリート)を意味するわけではない。しかし、その現象はエリート批判として表出している。
たとえば石丸伸二は、次のように語ることで、エリートとしての報道機関を批判する。
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「感度悪い」って思いましたね。どういう意味かというと、国民が求めている情報を出していない点だ。「わかっていないな」と思った。(略)これだけ時代が変わり、ネットメディア、インターネットの普及で、ものが変わっているにも関わらず「これまで通りのスタイル、スタンスを続けたい」とは。単に自分の立場に甘んじてるだけじゃないか。(略)一番の大企業病は、今はメディアに、はびこっている気がする。その病は死に至る病だ。まだ気づいていないとすれば、余計やばい。
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マスメディアを既得権益と位置づける姿勢は、斎藤元彦の支持者にも共通する。その中には、斎藤を県議会や県庁などの既得権益と戦う「正義のヒーロー」と位置付け、マスメディアは、“真実”を報じない共犯者であると考える者もいる。
社会学者の伊藤昌亮も、既得権益への批判が、石丸と斎藤支持者に共通する要素だと考える。
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石丸氏は、老害批判、既得権批判で若い世代の支持を得ました。兵庫県知事選でも、県議会や県庁は既得権益のかたまりで、斎藤氏はそれを壊そうとしているという『物語』が、現役世代を中心に受け入れられた。やはり世代間対立の構図がつくられ、既得権を批判する側が支持されたといえます。
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既得権益としてのマスコミ批判には、一定の妥当性もある。