たとえば西田亮介が指摘するように、テレビや新聞による選挙期間中の報道のあり方については、時代遅れ感も否めない。選挙期間中の報道は、放送法や公職選挙法によって明示的・具体的に制限されているわけではないものの、各社の忖度や自主規制によって、横並びの当たり障りない候補者や公約の紹介にとどまっている。

 結果、読者や視聴者のニーズに応えられない状況が生まれている。こうした構造が、マスメディアは“真実”を報じないという不信感を再生産し、疑念を強化していると言える。

「マスコミは既得権益、腐敗したエリート」か?

 マスコミが既得権益であり、腐敗したエリートだという批判は、マスメディアの関係者の声にも見られる。たとえば元朝日新聞記者の鮫島浩は、次のように述べる。

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 しょせんはエリートの社員たちが、安全地帯にいながら「権力批判をしているフリ」をしているだけ。いざとなったら腰砕けになって保身に走る。そういう醜い姿をたくさん見てきました。SNSやインターネットメディアの台頭が、マスコミの「やってるフリ」を完全にバラしたと言えます。インターネットを通じて誰もが情報を発信できるようになり、茶番が可視化されてしまった。政治家も官僚もマスコミも、完全に“あちら側”の人たちで、自分たちのことしか考えずに、既得権益を守っている。それが、明るみに出てしまった。

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 選挙とともに現れたエリート批判は、国を超えて広まっている。

 アメリカのコメンテーターとして知られるメーガン・ケリーは、2024年の大統領選でカマラ・ハリス候補を支持した歌手テイラー・スウィフトについて「テイラーとボーイフレンドのトラヴィス・ケルシーの二人は、エリートの俗物ぶりの典型だ」と痛烈に批判する。

メーガン・ケリー氏(画像:本人Xより)

 ケリーは反トランスジェンダーの立場から、民主党の副大統領候補のティム・ウォルズによる性的マイノリティ政策を批判し、その流れでスウィフトらに矛先を向けた。

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 彼らはどちらも莫大な富を持っている。彼女はこれらの子どもたちがどうなろうと気にしないし、彼もまた、自分が推奨しているファイザーのブースターを接種した若い男性たちがどうなろうと全く気にしていない。

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 ハリスに対する左派からの懸念も、エリート批判と結びついていた。ジャコバン誌は、大統領選の勝利のために、民主党が経済エリートを攻撃して、労働者階級の有権者を獲得する必要があったものの、ハリス陣営は「反エリートの対抗策を提示してこなかった」と指摘する。そしてアメリカにおける反エリートの機運を以下のように表現する。

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 しかし、国が誤った方向に向かっていると感じていたのは、労働者階級の有権者だけではない。格差が広がる中、政治体制への信頼はかつてないほど低下しており、いずれかの政党に共感する人は、これまで以上に少なくなっている。アメリカ人の70%が、強力な利害関係者が経済システムを不正に操作していると信じており、低所得層のアメリカ人のうち、「アメリカン・ドリーム」が今でも実現可能だと考える人は、わずか40%にとどまっている。そして、国が「正しい方向に進んでいる」と信じている人は、ほとんどいない。

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