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通勤ラッシュに赤ちゃん登場「日本は育児に冷たい」の妥当性

都市生活のストレスって、もう少しうまく捌けないものなんだろうか

2018/06/21

genre : ニュース, 社会

「迷惑な異物」の扱い

 そんな中で、通勤時間帯に出くわして「他に方法はなかったのか」と思う客がありまして、ひとつが赤ちゃん連れのお母さん、もうひとつが日本の通勤事情を知らずに闖入してきた、でっかいスーツケースを抱えた国内海外の旅行者さんたちです。どちらも、ダイバーシティを認めるべきという正論からすると守られるべき存在のはずが、毎朝のルーチンとマキシマムなストレスに晒されるサラリーマンの皆さんからすると文字通り「迷惑な異物」の扱いになってしまうわけであります。通勤時間帯に赤ちゃんに遭遇すること自体はそんなに多くないのですが、そのレアケースではだいたい赤ちゃんは大泣きするのが常でありまして、赤ちゃんは泣くのが仕事だとすると大変仕事熱心で結構と私なんかは思うわけであります。ただそれは私自身が子供になれている育児世帯だからというだけかもしれません。

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お母さんだって我が子をそんな修羅場に連れてきたくはない

 とりわけ、赤ちゃんだってお母さんの胸に抱かれてぎゅうぎゅうのラッシュに好きで乗ってきたわけでもないでしょうし、お母さんだって我が子をそんな修羅場に連れてきたくはないのでしょう。絶対、何か事情がある。会社の中に社員用の託児施設があり利用しているのかもしれない、いつもは来てくれるヘルパーさんやお祖母ちゃんが何かの都合でこれなくなり仕方なく職場近くのサービスに預けるのかもしれない。子育てを経験している人間であれば「ああ、お母さんも赤ちゃんも大変だな」と思うわけであります。

 しかし、現実は厳しい。私の見る限り、たまに席が譲られる程度で、通勤電車に無表情で揺られているサラリーマン諸氏が暖かい空気に母子を包んであげている光景を見ることは少ないのです。むしろ、苛立ち、舌打ち、腹立ちといった空気が車内を充満するように感じます。自分はとにかく揺れる電車の中で踏ん張って立っているのが精いっぱいのところで、ギャン泣きする赤ちゃんの声を聴くこと自体が耐えられない、苦難がもう一個増えたようなものだ、とむしろ「耐える」方向に行くしかないのです。