東京五輪(2021年)で日本の女子選手として初めて個人種目でメダルを獲得した、体操の村上茉愛(まい)さん(28)。現在は指導者として、後進の育成に尽力している。

 思春期の体型の変化や生理、露出のある衣装への性的な視線など、女性アスリートが直面する問題について、村上さんが思うこととは。(全3回の2回目/続きを読む)

村上茉愛さん。2021年の東京五輪では種目別ゆかで銅メダルを獲得し、同年10月に現役引退。母校日本体育大学のコーチを経て、2024年11月、日本体操協会の体操女子強化本部長に最年少で就任した ©松本輝一/文藝春秋

◆◆◆

ADVERTISEMENT

――体操女子の環境についても聞かせてください。男子と比べると、「選手寿命が短い」とも言われていますよね。

村上茉愛さん(以下、村上) 現状では、ピークは高校生と言われていますね。でも、私が東京五輪で銅メダルを獲ったのは24歳の時でした。練習の質、気持ち次第でまだまだ伸びるはずなんです。私の時代より今の子たちの方が実力はあるのに、諦めてしまうのはもったいないと思っています。

2021年、東京五輪での村上さん。種目別「ゆか」で銅メダルを獲得した ©JMPA

女性アスリートをとりまく思春期の悩み

――思春期は体型の変化などで苦しまれるアスリートも多いですよね。

村上 10代の頃はホルモンバランスの関係で食べないのに太ったり、ウエイトトレーニングしても筋肉がつかなかったりと、自分で自分の体をコントロールするのがすごく難しい。思うようなパフォーマンスができず、メンタルも安定しないので、限界を感じてやめちゃう人が多い。私も、かなりつらい時期でしたから、気持ちはよく分かります。

――特に体操は自分の体一つで向き合う競技です。

村上 体の変化がそのまま結果につながりますから、ナーバスになるのは当然です。ただ、クラブチームなどでは指導者は男性が多いので、そこにはあまり触れてこなかったんだと思います。

 

過激なダイエットは絶対に避けてほしい

――体重や体脂肪もかなり厳しく管理されているイメージがあります。

村上 クラブによっては毎日体重を計るところもありますけど、私は指導者としては、食事制限をしたくないですね。むしろ食べたいものは食べて欲しい。もちろん、体に必要な要素を摂った上で、ではありますが。

 食事制限をすると筋肉もつかなくなるので、当然ケガに繋がります。だから引退せざるを得ない。私はこの根本から見直さなければならないと思っています。

 体操選手というより、まずは自分の体を大事にしてほしい。無理はせず健康な体を維持してほしい。だから過激なダイエットは絶対に避けてほしい。