彼女が演じるのは、不動産業に就く夫トーマス(ニコラス・ホルト)を持つ新妻エレン。深く愛する夫が、オルロック伯爵(ビル・スカルスガルド)との物件契約でトランスシルヴァニアの伯爵の古城まで出向く。彼の安否を気遣うなか、彼女は繰り返し悪夢にさいなまれる。幼い頃から、自分が心の闇の中で何かとつながっているという意識を拭いされない彼女は、夫や愛する町を救うためその闇と対峙し、大きな決断を下すことになる……。

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 エレンという心の闇と夫への愛を抱えた複雑な主人公の心理を演じることについてはこう語った。

「監督は非常に面白い資料を数多く提供してくれた。彼には映画のビジョン、キャラクター像が明確に固まっていて、私はそれを基盤に役を作り上げていけた。もちろん自分の内部での役づくりというのは重要だし、それは自分にしかできない作業。特にエレンは感情豊かな役なので、自分の内部の感情の井戸を手探りで掘り進むようなパーソナルな作業だった。特に悪魔にとりつかれた若い女性についての文書などの資料がとても助けになった」

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霊にとりつかれた演技は日本の舞踏を参考にした

 確かに、エレンがスピリット(霊)にとりつかれる様を、全身全霊で演じるシーンは強烈な説得力を放っている。そこで参考にしたのが日本の舞踏だという。

「監督が日本の舞踏について教えてくれた。彼自身非常に興味をそそられ、エレンがとりつかれたシーンに取り込みたいと言った。自分でない他の何かが肉体を支配しているような、魂が肉体から離れてしまうような感覚を出すために舞踏がとても役に立った。自分の内部に空間を作り、そこに何かが入り込むというのか、その感覚を理解するのは演技の上で非常に役に立った」

 前述したニコラス・ホルトやビル・スカルスガルドに加え、ウィレム・デフォー、アーロン・テイラー=ジョンソン、エマ・コリンなど、強力な共演者の存在も重要だったという。

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「自由かつ大胆に演技することが大切だと感じた。周囲にはチームといえる仲間がいて、全員が意気投合していたので、それが可能だった。ロバート・エガースの映画の撮影現場で何が特別かと言えば、全員がチームの一員と感じ連帯している点よ。特に私にとって身体的に難しかったシーンなどは、それを実現するために共演者ばかりでなくスタッフ全員が一丸となって支えてくれた。お互いがお互いを頼りにした。そんな環境だから、自意識を捨てて大胆に演技することができた」