新潟・秋田が見せた戦略

 一方で産地では、25年産のコメが早くも争奪戦になりそうな気配が漂いつつある。そんな中で先手を打ったのは新潟県だ。

 JA全農にいがたは例年なら8月に、コメを出荷した農家に支払う一時金「概算金」を示してきた。ところが25年産に限っては2月28日と大幅に前倒しして、概算金を2万3000円(一等60キロ)とすることを公表した。前年比35%増であり、概算金の上昇率としては前例がない。しかも同額はあくまでも下限を示した「最低保証価格」であり、流通の状況を踏まえながら夏に最終決定する。

コメ価格の高騰が止まらない ©時事通信社

 JA全農にいがたから遅れること10日。JA全農あきた(秋田県)は、概算金方式から買い取り方式に改革することを検討している、と報道機関に明らかにした。

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 これだと何が「改革」なのか分からないと思うのでもう少し説明すると、JAがこれまで採用してきた概算金方式は委託販売を基本にしている。要はJAが農家に代わって販売する時期や値段、相手を決め、精算に至るまでの一切の業務を請け負う。すべてのコメを売り切るには時間がかかるので、まずは概算金という一時金を農家に支払う。販売の見通しが立った時点で儲けが出ていれば、そこから農家に追加払いをするという仕組みだ。

 JA全農あきたはこの概算金方式を取り止め、最初から農家に値段を提示して買い取るという。農家にとってみれば、概算金よりもまとまった金が入る。だから、JAに出荷する気持ちも湧いてくると、JA全農あきたは考えたのだろう。

窪田新之助氏 本人提供

 JA全農にいがたにせよJA全農あきたにせよ、背景にあるのはコメの集荷率が落ちていることだ。全国のJAの集荷率は04年に44.7%だったのが、22年には39.0%にまで下がっている。卸売業者や量販店、中食・外食業者がJAより高値を提示するようになったためだ。農家に好条件を提示することで、巻き返しを図るつもりなのだ。

※本記事の全文(約10000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年5月号に掲載されています(窪田新之助「コメの値段はこの秋も上がる」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
・本当に「スタック」しているのか
・中食業者からの警告
・「高温障害」が引き金に
・B銘柄をかき集めろ
・「農業ムラ」は市場もつぶした

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