元カノ一家を殺害するために、彼女の実家をガソリンで全焼させた26歳の男。なぜ警察は彼を犯人と特定できたのか? そして、逮捕された男の末路とは…。2019年の事件の顛末を、ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)
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「家が全焼した家族」のその後
「こんなことをするのは、関しか考えられない」
家族の誰もが思った。玄関前には見慣れないガソリンの携行缶が置かれていた。
警察に事情を話したが、また関が香織さんを襲ってくる可能性があり、父親はいち早く遠方の知人のところに預けた。
案の定、関は事件後も香織さんの行方を探しまくっていた。香織さん宅から祖母の車だけがなくなっていたので、香織さんがそれに乗って逃げているのではないかと思い、駅、病院、ビジネスホテルなど、駐車場があるところは一通り探した。友人に頼んで香織さんの携帯にかけてみたが、着信拒否になっていた。
「一体、どこへ行ったんだ。こうなったら、本当にヒットマンを使って、家族全員をやってやろうか」
一方、警察は着々と捜査を進め、香織さんを脅した強要未遂容疑などで、関を逮捕した。当然、放火についても追及したが、「やってません」と言い張った。