「50代だからこそ、BSの雰囲気と合致する」
先の番組ラインナップを見ると、ホストを務める芸人の多くが50歳を超えている。これは決して偶然ではないだろう。肩の力が抜けてきたタイミングで“自然体”を求めたとき、BSは歴戦の芸人たちにとって“イイ塩梅”なのだ。前出・酒井氏が説明する。
「『華丸大吉が行く! 大人もハマる神授業』のテレビ誌のインタビューに同席したのですが、この番組はお二人が各分野の専門家を訪ね、“神授業”を受ける教養バラエティです。その際、大吉さんが『BSといえば、“大人のBS”というイメージが昔からあります。かつてBSフジさんで『華大の知りたい!サタデー』(2015年4月~2016年9月)という番組に出演させていただいたときはまだ40代で、まだ若かったと思うんですよ。いまは50代も半ばにさしかかり、やっと歳相応になれたかなと思います』と仰っていました。50代だからこそ、BSの雰囲気と合致するところはあると思います」
BSの視聴者層は50代以上が多いという。肩肘張らない趣味的な番組を受け入れる土壌があり、視聴者自身、人生を折り返した人たちだ。視聴者と演者の感覚が近いからこそ親和性が生まれ、さらには酸いも甘いも噛み分けたMCクラスの芸人がBSというフィールドで等身大の姿を見せる。
私はまだ40代だが、四捨五入すれば「死」に近い。だからなのか、最近はギラギラしたものやキラキラしたものに疲れてしまう。少なくとも、午前中から芸人やタレントが、電流のビリビリを食らって一生懸命リアクションを取っている様子を反芻できるほど胃腸は元気ではない。私のように「折り返している」と感じている人にとって、BS番組は漢方のような存在でもあるし、カウンターカルチャーのようでもある。地上波の番組に疲れてしまうという人にすすめたくなるBS番組は、思いのほか多かったりする。
「おかげさまでBS番組を面白がってくださる視聴者の方は多いです。一方で、BS局としては、この先を考えていかなくてはいけないなと。つまり、30代、40代の視聴者層をいかにして増やしていくかです。2025年は、BSが開局して25周年という節目の年です。開局当時に比べれば、BS番組のラインナップはバラエティ豊かになり、認知度を向上することができたと思う半面、若い層を掘り起こしていかなければいけないという課題もあります」
開局当時、BS各局のラインナップは、再放送、ニュース、映画と似たようなコンテンツしか流れていなかった。だが、今現在の木曜22時のBS各局のラインナップを見てほしい。
BSフジ 『飯島直子の今夜一杯いっちゃう?』(飯島直子)
BS日テレ 『なおみ農園』(財前直見)
BS朝日 『家呑み華大』(博多華丸・大吉)
BS-TBS 『釣り百景』
BSテレ東 『あの本、読みました?』(鈴木保奈美)
飯島直子と財前直見と華丸大吉と鈴木保奈美(と釣り)が、BSで横一線に並ぶ世界線を誰が想像できただろうか。外呑みvs農園vs家呑みvs釣りvs読書である。BS番組は着実に面白くなり、芸人やタレントにとって魅力的な舞台装置に変わってきているのだ。30代、40代の掘り起こしを視野に入れるなら、今後、BS番組はさらに多種多様なラインナップになる可能性が高い。曲がり角を迎える今こそ、BS番組を見直してみてはどうだろうか。

