東京のタワーマンション市場が熱を帯びている。港区の超高層マンションは驚異的な価格上昇が続いており、最上階は1部屋2億ドル(円換算で300億円)と噂される。こうした高額物件の購入者は、どんな“景色”を見ているのか。不動産業界を22年にわたって取材してきた吉松こころ氏がレポートする。
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「東京の“重心”は港区に……」
タワマン御三家の一つで、東京のタワーマンションストーリーはここから始まったと言われる、「赤坂タワーレジデンストップオブザヒル」は、六本木ヒルズやアメリカ大使館をも見下ろす高台に建つ。この物件でさえ、2008年の新築当時の坪単価は、490万円だった。それから16年を経た、2024年9月の取引では、坪1366万円をつけた部屋があった。
私は、この「赤坂タワーレジデンストップオブザヒル」の25階にある住民用のラウンジに行ったことがある。居住している友人が案内してくれたのだ。100平方メートルは超えるような大きなバルコニーがあって、外部に出ることができた。右も左も、港区虎ノ門の再開発現場がよく見えた。丘の上というだけあって巨大な建築用クレーンでさえ見下ろすような見晴らしの良さだ。
友人が言った。
「あっちにもこっちにもどんどんビルが建っていくのがよーく見えるでしょう。ここにいたら、東京の“重心”は港区に移ってきているなあって日々実感できるんです。港区に住んでよかったですよ。ワクワクしますから」
上から見下ろしている人々と、下から「どんな人が住んでいるんだろう」と指をくわえて見上げている人々では、見ている“景色”もそこから得られる“戦略”も全く違う。
束の間見た私でさえ、「買うなら港区一択だな」と思った。