ここ数年、ファッション業界では本格的なダウンジャケットが売れにくい時期が続いていた。理由はシンプルだ。暖冬である。東京ならダウンベストや薄手のインナーダウンでも十分に越冬でき、「重装備のダウンは、もう必要ないのでは?」という空気すら漂っていた。
しかし今年は違う。気象予報では「冬が戻る」とされ、秋口から高価格帯のダウンが動き始めた。ショップ関係者の表情にも期待がにじむ。
とはいえ、物価高や円安など先行き不透明な今の時代、ただの“高いダウン”が売れるわけはない。求められているのは、目立つブランドロゴでもトレンドでもなく、たしかな保温性、耐久性、そしてオンからオフまで活躍する汎用性だ。
そこで今回は、これまで数百着以上のダウンジャケットを取材してきたファッションエディターの視点から、「今年、本当に選ぶべきモデル」を紹介する。羽毛の質、機能性、着回し力、少々値が張っても、その価値を実感できる信頼のダウンジャケットだ。
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データでも証明される「高級ダウン」
ナンガは滋賀県・米原市を拠点とする国産ダウンブランドだ。もともとは登山用シュラフ(寝袋)メーカーとして知られ、国内で洗浄された上質な羽毛や、自社工場による丁寧な縫製など、日本の技術力に根ざしたモノ作りを強みとする。
プロ登山家・竹内洋岳氏と共同開発した「マウンテン ピーク」は、そんなナンガの叡智が結集された一着だ。表地には超軽量・高密度ナイロンに防水透湿ラミネートを施した2.5レイヤーシェルが採用され、雪・雨・風など過酷な環境下でも性能を発揮する設計となっている。中綿には900フィルパワー(※)のハンガリー産シルバーグースダウンを封入して保温性を高めつつ、羽毛に撥水加工を施すことで湿気にも強い仕様に。さらにコールドスポット(縫い目から熱を逃がす部分)を最小化する独自キルティング構造によって、軽量性と高い保温性が両立されている。
※フィルパワー(FP) 羽毛の「膨らみ」=「空気をどれだけ溜め込めるか」を示す性能指標。数値が高いほど断熱性が高く、少ない量でも暖かい。一般的には600FP以上で「良質」、800FPを超えると「高級ダウン」とされる。
冬山にも対応できるハイスペックダウンだが、無駄のないシンプルなデザインと、着膨れしない立体構造によって、街使いもしやすい。安心感のある防寒着として、山でも街でも信頼のおけるアウターとなる。クルマにたとえるなら、ランドクルーザーといったところか。「これ一着で冬は十分」と思わせる説得力がある。




