その後、授業の振り返りの「ワークシート」に「つまらなかった」と書いてあったことにA教諭が気づき、イズミくんに近づいて、「お前、これ失礼だろ」と、再度、怒鳴り始めた。そして「お前はやりすぎだ。お前ちょっと来い」と怒鳴ると、イズミくんを職員室まで連れて行った。担任のB教諭も呼び出され、A教諭から叱責が続いた。
「イズミがノートに『つまらない』と書いていたのは確かによくないと思うのですが、もともと『ワークシート』は1カ月ごとの提出なんです。そのため、提出する時に整理して書き直そうと思っていたようです。しかも、『つまらない』は、このときの授業について書いたものではないのです。提出前のものについて、言い分を聞かずに怒鳴るのはやりすぎだと感じます」(母)
職員室から解放されたものの、A教諭はイズミくんに「ワークシート」の書き直しを命じた。イズミくんは教室で書き直している時に、涙があふれてきたという。教室には他の生徒もいた。
「A先生に怒られて落ち込み、担任のB先生も呼ばれて、さらに気持ち的に沈みました。教室の中で1人で『ワークシート』を書き直しているうちに、(気分が)どん底になってしまって、『死んでしまいたい』と思ったんです。書いている途中からもう頭の中は死に方を考えるのでいっぱいで、自宅から中学校とは逆方向にある橋のことを思い出していました」(イズミくん)
「自分が死ぬことはほぼ確定していました」
イズミくんはその日、学校から帰宅して2時間ほどゲームをすると家を出た。
「家を出る前に、ゲームのデータをまるごと友人にLINEで送りました。自分の大好きなゲームだったので、引き継いで欲しかったんです。その時には『死んじゃおう』と思っていて、自分が死ぬことはほぼ確定していました。『死にたい』と思ったのはそれが初めてでしたが、当時の自分にとっては他の選択肢はありませんでした」(イズミくん)
自殺直前は「心理的視野狭窄」つまり、死ぬか生きるかという極端な考えに陥ることが多いと言われており、イズミくんもその状態だったのだろう。そんなイズミくんが向かったのは、自宅から数キロ離れた大きな橋だった。本屋に向かう時などに何度も通ったことがあり、橋は水面から約10mほどの高さにあるのでそこから飛び降りようと思ったという。

