なぜ自殺が多発するのか? 新宿・歌舞伎町の「シネシティ広場」周辺、通称「トー横」にたむろする若者たちが抱える心の闇とは? フリーライターの渋井哲也氏の新刊『子どもの自殺はなぜ増え続けているのか』(集英社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

写真はイメージ ©getty

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10代自殺の象徴「トー横」のリアル

 2023年夏。新宿・歌舞伎町の「シネシティ広場」周辺、通称「トー横」には、10代の若者たちも多く集まっていた。ここは、以前はコマ劇場前広場と呼ばれ、今と同様に多くの若者たちが集う場所だった。筆者も昔はその広場で朝まで過ごし、そこで見知らぬ人たちとお酒を飲んだり、夜通し話をしたりした。

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「シネシティ広場」は「新宿東宝ビル」の横(西側)に位置し、子どもたち、若者たちが多く集まる。「新宿東宝ビル」の横だから、いつしかその場所は「トー横」と呼ばれるようになった。

 もともと、コロナ禍が始まった20年当初、ここにはSNSのTwitter(現在のX、以下同)やInstagram、TikTokで写真や動画を撮り、投稿していた人たち、通称、「自撮り界隈」と呼ばれる若者たちが集まっていた。「新宿東宝ビル」東側の、「Ⅰ♡歌舞伎町」という電光掲示板があるビルを背景に撮影していたことも、その場所が知られる理由になった。

 当初、トー横は、「新宿東宝ビル」の東側の路地を指していた。周辺に集まる子どもたちは、歌舞伎町の大人たちから、「お店で飲むお金を持っていない」などの理由から、いつしか、「トー横キッズ」と呼ばれるようになっていた。

 その「トー横キッズ」を相手に淫行をして逮捕される人が出たり、未成年飲酒や市販薬・処方薬のOD(オーバードーズ・過剰摂取)が流行したりした。その後、都や警察当局は、若者が路地に集まらないように呼びかけた。また、座れないように「鳥よけシート」を設置した。

 ただ、その場所にいる10代、20代の層の特徴が変わってきた。コロナ禍で行き場のない若者たちが集まってくるようになったのだ。そして路上で遊んだり、飲酒をしたりする姿をSNSに投稿するようになっていく。そこで話題になった人たちと仲良くなりたいと、次々に若者たちが集まってきた。家で虐待されていたり、学校でいじめや体罰、不適切指導、性被害を受けていたりする人たちも自然発生的に増えた。

「トー横四天王」を名乗るリーダー風情の人たちも現れた。