子どもの自殺者数は約40年で1.5倍に…自殺対策基本法の改正やSNSを活用した相談体制の充実がなされているのに、なぜ子どもの自殺がなくならないのか? フリーライターの渋井哲也氏の新刊『子どもの自殺はなぜ増え続けているのか』(集英社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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子どもの自殺はどんどん増加している

 近年は子どもの自殺の増加が目立つ。それは今に始まったことではない。厚生労働省の「自殺対策白書」で見てみると、2007年と比べて、2023年の時点で10代の自殺死亡率(10万人あたりの自殺死亡者数)は、4.5から7.5となり、1.7倍増加した。このうち男性は5.4から7.8と1.4倍増となった。一方で女性は3.5から7.2となり、約2倍増えたことになる。

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 ここ数年もコロナ禍で子どもの自殺が目立った。特に2020年は高校生女子の自殺者は前年の2倍になった。しかし、コロナ禍のみが要因なのではなく、コロナ禍は子どもの自殺の増加傾向を可視化したにすぎないのではないか、と筆者は考える。

 最新のデータを見てみよう。

 文部科学省は毎年10月、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下、問題行動調査)を発表している。現在の調査対象は国公私立の小学生から高校生だ。「自殺」は1974年から学校を通じて調査している(当時は文部省が調査)。当初は公立の中学と高校のみが対象だったが、1977年からは公立の小学校も含めている。2006年度からは、国立も私立も調査対象となり、2013年度からは、高校の通信教育課程も含むようになった。その意味では、データの範囲が一律ではないために単純な経年比較はできない。

 

 それを前提にすると、2020年度に学校が把握した自殺者数は小中高生合わせて415人で過去最多だった。高校生のみで300人を超えているのは、2023年度までにこのときだけだ。

 最新2023年度のデータでは、小中高生合わせて397人。過去3番目の多さだ。中学生(126人)は過去最多となった。高校生(260人)も過去4番目の多さである。この時代に、なぜ小中学生の自殺が増えているのか。なお、文科省調査の数字は、察庁の統計よりも少なく算出されている。

 過去に子どもの自殺が目立ったのは、1986年。この年、中学生男子がいじめを理由に「“生きジゴク”になっちゃうよ」と遺書に書き残し、駅ビルのトイレ内で自殺した。また、松田聖子2世と呼ばれたアイドル・岡田有希子が所属事務所ビルから飛び降り自殺をした年でもある。

 この年は連鎖自殺が相次いだといわれる。このときは小中高合わせて268人だったが、2023年度はその1.5倍の自殺者数だ。