しかも、2023年度のデータを見ていると、小中高ともに、女子の自殺者数が男子を超えていることがわかった。一般には、男性の自殺者数が女性の自殺者数よりも多い。なぜなら、男性は悩みを周囲に相談しない傾向があり、かつ致死性の高い自殺関連行動を取るためとも言われているからだ。
しかし、中学生で女子の自殺者数が男子を上回る傾向はいつからなのか?と思い、過去のデータを見てみると、2019年度は男子が46人で、女子の45人よりも1人多いが、2020年度は男子48人に対して、女子は55人と逆転。以降は、女子が多い傾向が見られる。これまでのデータを覆した。なぜなのだろうか。理由は後述する。
コロナ禍だけで説明できない自殺の増加
2022年は新型コロナウイルスの感染拡大が続いていた時期だ。コロナ禍で人間関係のあり方が変わり、リモートで授業が行われたことの影響で自殺者数が増えたといわれている。
芸能人などの自殺報道があると、「鬱」「うつ病」「不安」「悲しい」などの不安を示す言葉や、「自殺サイト」や「自殺方法」、あるいは「死にたい」などの念慮を示す言葉のインターネットでの検索数が増加することがわかっている。コロナ禍は芸能人の自殺やその可能性のある出来事が続き、瞬間的な関心の高まりと、自殺報道による思い出し効果があったのではないかとの分析もある。報道に接したことで過去の経験を想起させ、「自分ごと」として捉える「自己関連づけ効果」(自分に関連させて処理すると、他者と関連して処理した場合よりも記憶が促進されるということ)があったということだろう。そのためか、過去の不安な感情まで思い出し、関連語を検索する行動が見られたのだろう。
ただし、コロナ禍を通じて、10代に大きな影響を与えたものが明確にあったかといえば不明だ。コロナ禍という理由以外のものは誰もが想像しにくい。しかし、コロナ禍だけで説明できないことはデータ上、明白だ。なぜなら2016年から、自殺者数は増加傾向を示しているからだ。