学校教員の長時間労働や残業代未払いが社会問題化している。公立学校の教員については、普通の労働法が適用されず、ただ働きが「合法」だということが原因だ。
「給特法」(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)が公立学校の教員は、月給の4%さえ支払えば、残業代を支払わなくてよいとしているのだ。
(この制度の問題点については、文春オンラインでも名古屋大学准教授の内田良氏が〈教員の過労死63人も「氷山の一角」 “ブラック職員室”の実態〉で書いているので、未読の方はぜひ読んでみてほしい)。
見落とされがちな私立校教員の「働き方改革」
その一方で私立学校でも、教員たちが長時間労働・残業代未払いに陥っていることが非常に多い。しかし、その実態については、公立学校ほど注目されているとは言いがたい。
じつは法律的な観点からいえば、公立学校より私立学校の教員のほうが、ずっと「問題」にしやすい。というのも、誤解されがちだが、私立学校の教員には、さきほどの「給特法」は一切適用されない。私学教員に残業代を払わなければ、労働基準法違反になるのだ。
こうした私立学校の長時間労働・残業代未払いを是正するため、今年5月に私学教員ユニオンという労働組合が結成された。さらに6月には、関西大学付属の小学校・中学校・高校が、同校の労働組合の団体交渉の結果、過去の未払い残業代を支払うという画期的な合意に至っている。私立学校でも、新しい動きが現れ始めているのである。
本記事では、このような労働組合の実践を紹介しながら、見落とされがちな私立学校の長時間残業において、どこまでが労働時間であり、どこまで残業代を請求できるのかを解説していきたい。
残業代支払いに合意した関西大学付属校
はじめに、大阪府にある関西大学付属の小学校・中学校・高校のケースを具体的に見てみよう。労働組合による追及の結果、これまで給与の対象とされていなかった以下の業務について残業代を払うということで、今年6月時点で経営陣とほぼ合意に至ったという。
新たに給与の支払いで合意したのは具体的には以下の通りだ。
「授業準備等(考査や小テストの作問・採点含む)」
「補習」
「保護者対応(電話対応含む)」
「生徒対応」
「特別指導等の生徒対応」
「業務に関わる会議・打ち合わせ等」
「入試事務」
「教材研究」
「部活動指導」
「登校指導」
(※「給食指導」については所定時間内の労働時間とされた)
同校の労働組合によれば、これらの業務について、始業時間前や就業時間後に行われていた場合に、残業時間であるとして、学校は時間通りに残業代を支払うことになったという。