45歳で離婚、大学にも通った

 このほか、今年に入って新たにいくつかの媒体でエッセイの連載を始めるなど、俳優以外の仕事もあいかわらず精力的にこなしている。プライベートでは2011年に脚本家・三谷幸喜との16年の結婚生活にピリオドを打ったのと前後して、いままでやりたかったのに先延ばしにしてきたことに向き合おうという思いが強くなったという。そこでまずは45歳で大学の社会人入試を受けて合格し、日本文化について学んだ。在学中は、若い友達も何人かでき、連れ立ってオーストラリアへ卒業旅行にも行ったとか。

2014年、映画『紙の月』プレミア試写会。(左から)近藤芳正、田辺誠一、大島優子、宮沢りえ、池松壮亮、小林聡美、吉田大八監督。小林聡美は同作で第57回ブルーリボン賞助演女優賞などを受賞している ©時事通信社

 そもそも日本の文化に興味を持つようになったのは、柳家小三治(2021年死去)の落語を聴きに行ってその芸に魅せられたのがきっかけだった。小三治が永六輔や小沢昭一などといった面々と「東京やなぎ句会」という句会を半世紀以上続けていることを知ると、小林も俳句を始め、友人たちと句会を開くようにもなった。ついには本家のやなぎ句会にも、初の女性メンバーとして迎えられている。

仕事も遊びも詰め込みすぎないよう心がけている

 大学に続く“先延ばし案件”は田舎暮らしであったが、移住先を検討するうちコロナ禍になってしまい、一旦保留する。代わって50代半ばにして始めたのが、やはり長らく先延ばしにしていたピアノを習うことだった。#1で挙げた昨年刊行の著書『茶柱の立つところ』(文藝春秋)でも、ピアノの練習に励む様子がユーモアも交えてつづられている。

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WOWOWオリジナルドラマ『ペンションメッツァ』(2021年)

 こうして見ると、小林はいかにも多忙な日々を送っていそうだが、最近は仕事も遊びも予定を詰め込みすぎないよう心がけているという(『暮しの手帖』2024年6・7月号)。まるでこれまで作品のなかで演じてきたスローライフを、60歳を境に実践しつつあるようだ。

 もっとも、彼女は若い頃から「あまり仕事はバリバリとしません」と語っていたことを思えば、一貫しているともいえる。いまは頃合いを見計らっているという田舎暮らしを含め“先延ばし案件”を片づけつつ実人生を充実させていくなかで、俳優・小林聡美が新たにどんな顔を見せてくれるか、楽しみだ。

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