カスタムカーの世界には、「誰かと同じ」であることを全身全霊で拒絶する人々がいる。彼らのこだわりの原点には、一体どんな秘密があるのだろうか。今回は、3人のカスタムカーオーナーたちの熱い思いに迫った。

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人生で車にかけた金額は1億円近く

「車バカド派手野郎」さんは、18歳から車を弄り続け、現在乗っている初代エスティマで46台目だという。これまでの人生で車にかけた金額は1億円近くに及ぶそう。

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「18歳からバニングを7台乗り継ぎ、それからも街道レーサーとかVIP系とか、あらゆるジャンルに手を出しましたが、やっぱり原点は当時の大黒にあるんです」

車の乗り替えは直感重視。過去にはフィーリングが合わず、納車後すぐに売却してしまった車も

 彼のこだわりは、すべてを自分の手で仕上げること。ショップに出さず、DIYでどこまでやれるかを追求している。

「もちろんこれは自己満足でもありますが、若い人たちに『DIYでもここまでできる』って伝えたい気持ちもあります」

 しかし、現在のカスタムカー業界は厳しい状況にあるという。改造車への風当たりが強くなり、物価も上昇。カスタムのハードルは年々高くなっている。

ダークトーンで統一された初代エスティマ。希少性もあいまって、ただならぬ存在感を放つ

「日本車も日本の若者も元気だった時代の熱といいますか、その勢いを少しでも今に残したい気持ちがありますね」

 そんな彼の姿を見て育った6人の子どもたちは、車に対して好意的だという。特に下の4人は、いつもイベントに同行している。

「この前は『パパが死んだらパパの車に自分が乗る』とも言われましたね。父親が夢中になってきたものを、ちゃんと見てくれていたんだなって、ちょっと嬉しかったんですよ」

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 一方、『クレヨンしんちゃん』仕様のバニングに乗る「土建屋岡ちゃん」は、幼少期の強烈な印象が原動力になっているという。

バニング仕様に仕上げられたハイエースに『クレヨンしんちゃん』のイラストを追加

「小さい頃は近所によくバニングが走ってたんですよ。子ども心にインパクトが強烈で、『いつか自分もああいうのに乗りたいな』と、ずっと憧れがあったんです」

「還暦過ぎても弄っているかも」と冗談めかす

 彼の車は、春日部近くでの単身赴任生活から着想を得たものだ。地域性を大切にしたいという思いが、独特のデザインに反映されている。

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 家族で楽しむカスタムカーの世界もある。「ちぃ」さん一家は、ハイエースのカスタムを通じて新しいコミュニティを見つけた。

「ハイエース乗りは家族連れが多いので、いつも大きなファミリーみたいな雰囲気で。年齢も仕事もバラバラだけど、みんなでワイワイ盛り上がれて、とても居心地がいいんですよね」

ファミリーカーのハイエースをカスタムする「ちぃ」さん

 3人の子どもたちも、両親の趣味に興味を示している。特に下の2人の男の子は車が大好きだという。

ホワイトのボディに赤と黒の差し色を取り入れたハイエース

「自分たちの車に愛着を抱いてくれるのはもちろん嬉しいですけど、もし将来子どもたちが別のものに興味を持ったとしても、寂しいとは思わないかな。最終的には自分で好きなものを見つけて、そこで熱中できればいいと思いますね」

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 カスタムカーの世界は、単なる趣味の域を超えた深い愛情と情熱に満ちている。それは時に仕事や家族関係にも影響し、生活や価値観の変化をもたらすこともある。オーナーたちの姿を通して、私たちは「好きなこと」に打ち込むことの意味を、改めて考えさせられる。

次の記事に続く 《改造費用200万円》「普通の会社員の身としてはキツいものがありますね…」20代女性が生活を切り詰めてまで“オデッセイ”のカスタムに没頭する“意外なきっかけ”

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